2017.8.26 排他的な孤島に隠された秘密 【パンドラ・アイランド 下】
パンドラ・アイランド 下/大沢在昌/著【文庫 集英社】
評価:3
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■ヒトコト感想
上巻では青圀島に隠された資金と、外部からは隔離された孤島での殺人事件がメインとなった。本作ではそれらの解決編というべき扱いだ。島に保安官として赴任した高州の前に現れた女・チナミ。上巻では特別な問題はないように思われたが、下巻にてその本性をあらわにしている。様々な事件の裏が判明すると、そこにことごとく顔をだしてくるチナミ。
関係者とも深い関係にあり、秘密に大きく関わっていると思われることは間違いない。島の隠し財産については、村長や村の主要幹部たちすべてを巻き込んだ組織ぐるみの隠ぺいだと判明する。そして、全てのカギを握る殺人者の存在。下巻では連続して殺人が起こり、犯人候補と思われた人物たちが除外され、犯人の予想は困難となる。
■ストーリー
転落死、放火、そして射殺事件。高州の赴任以来、青國島の平穏な暮らしは一変した。島の“秘密”に近づく高州の行く手を排他的な島の人間が阻む。村長の井海、アメリカ人医師オットー、高州に近づく娼婦チナミ…真実を知っているのは…。
■感想
外部から隔離された孤島・青圀島で、さらに事件が起こる。犯人は島の関係者であることは間違いない。犯人と思わしき人物たちが、次々と犠牲になっていく。誰もが怪しく見えてしまう中で、高州に近づく娼婦のチナミの存在がよりクローズアップされる。
高州に近づき守ってもらいたいとささやく。いかにも何か秘密がありげで、危険な香りが漂う存在だ。本作は孤島というところがポイントだ。犯人は新たな人物だということはない。必ず島の中に犯人は存在する。となると…。
犯人が判明するまでの引きの強さはすばらしい。次々と候補者が殺されていくと、村長が犯人なのでは?なんてことも考えてしまう。島の隠し財産をめぐる醜い争い。誰が嘘をつき、島ぐるみで隠していた真実がついに明らかとなる。
島が濃い霧に包まれ、犯人が自由にアチコチ動き回り、島は常に危険な状態となる。高州が信じられるのは、捜査一課の面々しかいない。チナミは、すでに最も怪しい人物のひとりとして、高州の中ではマークされている。この高州の人物評の変化もポイントだろう。
島に隠された秘密が明らかとなる。殺人犯の正体は衝撃的だ。チナミが何かにおびえていた理由と、そこに至るまでに消えていった犯人候補者たち。島に隠された財産は島民たちのことを考えての行動であり、殺人事件は、その隠し財産を独り占めしようとたくらむ者の存在による。
最後の最後には、チナミがその本性を明らかにする。男に頼って生きてきたチナミは、常に強い男に乗り換えて生きてきた。今回も、高州というよりも自分を守ってくれる存在を見つけ出したのだが…。
排他的な孤島内部で発生した奇妙な事件だ。
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