パンドラ・アイランド 上 


 2017.8.11      アンタッチャブルな島 【パンドラ・アイランド 上】

                     
パンドラ・アイランド 上/大沢在昌/著【文庫 集英社】
評価:3
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■ヒトコト感想
元刑事の高州が、孤島・青國島に保安官として勤務することになる。正式な刑事ではない島の治安を守る存在。排他的であり、島の住人を外から出したがらない謎の島。よそ者である高州の存在が島に大きな変化を巻き起こすことになる。いかにも怪しげな雰囲気が漂う島だ。観光客を呼び込むのではなく、何かしら収入の手段があることを匂わせる展開となる。

島内で老人の転落死が発生すると、その事故を調査する高州。ここで、さまざまな事件が発生し、高州を排除しようとする力が働いてくる。元刑事の高州が刑事の権限がないために、あらゆる面で苦労をしている。そして、本土から捜査一課がやってきて、殺人事件の調査をすることに…。

■ストーリー
平穏な暮らしを求め、東京から七百キロ離れた孤島・青國島に来た元刑事・高州。“保安官”―司法機関のない島の治安維持が仕事だ。着任初日、老人が転落死した。「島の財産を狙っておるのか」死の前日、彼の遺した言葉が高州の耳に蘇り…。

■感想
主人公の高州がなにか影のあるキャラとなっている。元刑事で妻も優秀な刑事。保安官として島の治安を守ろうと仕事をするが、でしゃばるなとも言われてしまう。外部から遮断された世界というのは、そこに既得権益が発生し、排他的となり秘密を守るために島から人を出さないようになる。

島内ですべてが賄えるようになっており、風俗的なモノまで役所が先頭にたって設立してしまう。マスコミに知られれば、間違いなく大騒ぎになる島であることは間違いない。

島の秘密が何かを匂わせるような記述がいくつかある。銃の密造なのかそれともコカイン栽培なのか。島で唯一の医者ですら、何かを知っていながら隠しているようなそぶりがある。高州自身もその隠された何かをつかめそうでつかめていない。

本来なら島に金を落としてくれる観光客を喜ぶはずだが、島内の人々は観光客を忌避する。小さな島だけで外貨がなければ島は潤わないはずだが…。レンタルビデオショップや風俗まである島。島内だけに通用するローカルルールの存在が高州を排除する流れとなっている。

上巻では島の秘密は明らかとはならない。高州の元妻である有能な刑事の調査力と、高州の元上司である捜査一課の班長が島内でどのような役割を果たすのか。島内部で起きた殺人事件がカギとなり、島の秘密が明かされるのは間違いないだろう。

ただ、どこまでの島民たちがグルで、どのような隠された謎があるのかが非常に興味深い。ハードボイルド色は強くない。ただ、よそ者であるはずの高州が、偶然出会った美しい島民と良い仲となったりと、若干ハードボイルド的な都合の良さを感じずにはいられない。

島の収入源は何なのか。下巻で明らかになることだろう。



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