2017.10.24 ホワイトタイガーの正体が弱い 【欧亜純白 ユーラシアホワイト 下】
欧亜純白(下) ユーラシアホワイト 徳間文庫/大沢在昌(著者)
評価:3
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■ヒトコト感想
上巻で複数の組織が麻薬ビジネスの権利をつかもうと躍起になっていた。すべてのカギを握る存在である「ホワイトタイガー」は名前とその力だけは大きく描かれていたが、その存在は明らかとならなかった。下巻ではついにホワイトタイガーの正体が明らかとなり、ロシア、中国、日本、アメリカそれぞれの戦いが始まる。
主要人物たちは強力し合うのだが、中盤でははっきりと悪の黒幕の存在は見えてこない。ホワイトタイガーの正体がそこまで特別感がない代わりに、ラストの戦いを盛り上げる悪の枢軸たる存在がパワーアップしてくる。長大の物語の結末としては、ラストではヒリつくような駆け引きの結果としての結末がある。
■ストーリー
「黄金の三角地帯」と「黄金の三日月地帯」という世界二大ケシ産地を抱えるユーラシア大陸をまたにかけて、新たにヘロインビジネスを牛耳ろうとたくらむ謎の人物「ホワイトタイガー」。国境・人種を超えた犯罪組織の熾烈な抗争と罠、謀略、暴力の渦。ロシア、中国、日本―ユーラシア大陸に広がる“白い悪の連鎖”を潰せ! ベリコフと三崎、二人の闘いの行方は? 超巨編ハードボイルド完結篇。
--このテキストは、文庫版に関連付けられています。
■感想
ユーラシア大陸をまたにかけたヘロインビジネスを牛耳るため、みながホワイトタイガーと繋がりをもとうとする。ホワイトタイガーの正体が不明であり、関係者ですらその正体を明かすことはない。上巻での盛り上がりは、このホワイトタイガーの存在があったからだろう。
下巻となり、ホワイトタイガーへと繋がる道がはっきりと見え始めてきた。そこで三崎やベリコフが危険な手段を取りながらも、ヤクザ組織やCIA、そしてDEAたちと協力しながら捜査をすすめている。
三崎の立ち位置は常に危険と隣り合わせだ。サカモト組と連携しているが、実は三崎が麻薬取締官だと知れたら、まっさきに殺される立場だ。三崎は危険を冒しながらホワイトタイガーへ近づき、ついに正体を明らかにする。
正直、今までひっぱったホワイトタイガーだが、そこまで衝撃的な存在ではない。すでに登場していた誰かが実はホワイトタイガーでした、というオチならば驚いたのだが、そうではない。新しいキャラがホワイトタイガーだと言われも、そこまで衝撃的ではない。
本作はホワイトタイガーの正体よりも、ホワイトタイガーが作り上げられた経緯がポイントなのだろう。CIAが絡みヘロインビジネスを作り上げる。そして、ラスボス的存在は、上巻から頻繁に登場してきたあの男となる。
すべてのからくりが明らかとなり、三崎が覚悟を決めたとしても、まだまだ問題は山積みだ。三崎の正体がバレ、サカモト組や関係者が一堂に介した場面でのヒリつくようなやりとり。ラストの盛り上がりはすばらしいが、長大な物語のオチとしては弱い。
やはり、ホワイトタイガーの正体にインパクトがないと辛い。
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