ニッポン泥棒 下  


 2017.2.18      ありきたりなアクション映画のようなラスト 【ニッポン泥棒 下】

                     
評価:2.5
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■ヒトコト感想
未来予測ソフト「ヒミコ」の内容が明らかとなり、ヒミコをめぐる争いが激しくなる。ヒミコを手に入れるためのカギとなる尾津とかおる。そして、技術者たち。さらにはアメリカの組織も動きだす。ヒミコの力を恐れ消滅させたい者と利用したい者が同じ組織にいることで、ヒミコをめぐる争いは激しさを増す。

ヒミコを手に入れるために尾津とかおるが必要だということも、しっかりと描かれている。が、そのあたりにあまり衝撃はない。未来予測についても言葉だけはすごいのだが、あとはその効果を想像し、周りが盛り上がり、手に入れるために争うだけだ。結局のところ後半はヒミコという宝を手に入れるために、ひたすら争っているだけという感じだ。

■ストーリー
恐るべき機能を秘めた未来予測ソフトウェア「ヒミコ」をめぐる国際的な争奪戦が始まった。ヒミコの鍵を握る尾津とかおるの潜伏先に突如現れた男は、敵なのか、味方なのか?各人の思惑が乱れ飛ぶ中、事態は動き、尾津はついにヒミコを狙う組織の首領“コブラ”と対峙する。果たしてヒミコの扉は開かれるか。

■感想
ヒミコをめぐる争いは激しくなる。尾津たちの元に現れた冬木は敵なのか味方なのか。ヒミコを手に入れたい勢力とヒミコの力を恐れ、排除したい勢力が同じ組織にいる。となると、尾津たちの立場も様々に変化してくる。

ヒミコを消滅させたい者にとっては、尾津かかおるを殺せば、それだけでヒミコを誰も手に入れることができない。逆に手に入れたい組織は、尾津とかおるを守ることになる。相反する目的を持つ者たちが、同じ組織でお互いけん制し合いながら尾津たちを探しだす。この駆け引きが見事だ。

尾津とかおるがヒミコを動かすカギとなる。二人の人間がカギとなるのはどういった意味なのか。上巻で謎だった部分は、下巻で解決されたのだが…。二人の会話で二人が本物かを判定する。これはまさにAIでないとできないことだが、なんとなく別人が答えても一致しそうな気がしてならない。

ヒミコが手に入ると、あとは技術者であるコブラたちが活躍する。そこで、ヒミコを手に入れるために尾津やかおるが必要ないとなると、二人は殺される可能性がある。非常に危険な綱渡り状態が続いていく。

ラストのオチは、なんだかありきたりなアクション映画のような終わり方となっている。結局のところヒミコは皆が気にする宝物のひとつでしかない。それを消滅させようとしたり、手に入れようとしたり、激しく争うだけ。

最後に勝つのは、今までどちらの味方かわからなかった者が、結局尾津たちの味方だったというオチで終わる。ヒミコの理論は面白く、またそれを手に入れるためのカギとして人間を絡めてくるのは面白い。が、結局のところヒミコを手に入れようと争うだけの物語となっている。

ヒミコの特性を活かした何かを期待してしまった。



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