ニッポン泥棒 上  


 2017.2.8      知らないうちに自分が鍵にされる 【ニッポン泥棒 上】

                     
評価:2.5
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■ヒトコト感想
64歳、離婚し非正規社員の男・尾津。突如として未来予測ソフト「ヒミコ」を見つけ出すためのカギとなるアダムだと言われる。平凡な60代の男が直面する問題にしては、荒唐無稽すぎる。未来を予測するソフトのヒミコは、今で言う進化したAIなのだろう。尾津自身はネットに疎くとも、尾津を助ける周りの者たちがネットを駆使して、当時では最新のネット情報が物語に盛り込まれている。

仕事にあぶれていたはずの尾津が、突如としてヘッドハンティングされる。明らかに何かがおかしい状態だ。本人が知らない間に事件の当事者とされる恐怖が伝わってきた。それも世界を震撼させるようなソフトの鍵となるならば、否が応でも尾津周辺は騒がしくなるのだろう。

■ストーリー
失業し、妻にも去られた64歳の尾津に、青年は突然告げた。あなたは未来予測ソフトウェア「ヒミコ」の解錠鍵“アダム四号”なのだ、と。ヒミコを狙う強大な勢力の手から、尾津は逃れられるのか?もう一人の解錠鍵“イブ二号”の正体とは?リアルワールドとインターネットを股にかけた、かつてないサスペンスが幕を開ける。

■感想
64歳の男が世界を揺るがす未来予測ソフトの鍵となる。それまで商社で活躍していたが、会社がつぶれ非正規社員としてほそぼそと生活していた。バツ1で何の変哲もない人生を過ごすはずが、突如として大きな出来事に巻き込まれることになる。

この手の、本人が蚊帳の外で周りが大騒ぎするパターンの作品は、本人の心境と読者の心境がリンクする場合がある。なぜ?それほど価値のない自分が急にヘッドハンティングされるのだろうか。急に昔の友達から就職の誘いがくるのか。そのあたりが巧みに描かれている。

中盤では未来予測ソフト・ヒミコの秘密が明らかとなる。全世界の情報を集め、人物のデータをインプットすることで未来を予測する。この人物が消えると世界はどうなるのか。まさに世界をシミュレートするソフトだろう。本作が描かれた当時のネットの状況を反映している作品だ。

ただ、当時は最新情報だとしても、今読むとなんだか古臭く感じてしまう。10年以上前の作品なのでしょうがないのかもしれないが…。ネット社会で追跡されると、その網から逃れるにはアナログに戻るしかない。

尾津がアダムで、もう一人鍵となる人物イヴがいる。このふたりの物語がヒミコを見つけ出す鍵となるようなのだが…。まったく想定がつかないソフトを見つけ出すために、アダムとイヴの物語というのはいったいどういった意味があるのか。

上巻ではヒミコの内容と、尾津周辺が騒がしくなる部分が描かれている。下巻ではヒミコを手に入れようとする勢力がより積極的に活動してくるのだろう。アダムとイヴが鍵となるのを、どのように表現するかがポイントかもしれない。

下巻でどのような結末にするのか、楽しみで仕方がない。



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