村上さんのところ 村上春樹


 2015.12.27      ハルキストに異論あり 【村上さんのところ】

                     
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■ヒトコト感想

村上春樹がサイト上で読者から質問をつのり、作者が回答したものをまとめた作品だ。海外からの質問や、ごくプライベートな質問、小説の内容の質問から、登場人物と現実の作者や奥さんに関することまで。多種多様な質問があり、それらに冗談を交えながら答えている。印象的なのは、小説の内容について性的な描写が多いことで、子供たちに読ませられないという質問に対して、作者は小さい子にも読んでほしいと答えていることだ。

そのほかにも、「ノルウェイの森」の登場人物の中に、奥さんをモデルにした人物がいるなど、作者に即座に否定されてはいるが、興味深い質問が多々ある。これらの質問にすべて答えている作者はすばらしい。期間限定とはいえ、こんなサイトを運営するとは、かなりイメージが変わったのは確かだ。

■ストーリー

期間限定サイト「村上さんのところ」上で、村上春樹が3か月半にわたって続けた回答は、じつに3765問! その中から、笑って泣いて考えさせる「名問答」を473問を村上さんご自身がセレクトし、可愛くてちょっとシュールなフジモトマサルのイラストマンガ約51点を加えた待望の書籍版!

■感想
読者の質問は小説に関係することから、まったく無関係な読者のプライベートな質問まで多種多様だ。その中で、海外で作者の作品は熱狂的に支持されているということがわかる記述がいくつかある。サイン会をすると他の作家の列よりも、作者のサインをもらいたいという列が圧倒的に長くなる。

もしかしたら、日本よりも人気があるのでは?と思わされるような流れがある。日本では何かとアンチ的な意見が多いのは確かだろう。文学として認めたくないというような人も多いのかもしれない。海外の方が圧倒的に支持する人が多そうだ。

作者の作品では不倫関連の物語が多い。となると、それにアレルギー反応をしめす読者もいる。不倫はダメだという意見があるのだが、作者は思うがままに、という回答をしている。不倫や男女の関係については、作者は割とおおらかな考えを持っている。それがイコール作者の男女関係には繋がらないという言い訳はしているのだが…。

小説の内容が分かりにくいだとかいうことに対しては素直に認めていたりもする。作者の熱烈なファンのことをハルキストと呼ぶが、それについても異論があるようだ。

基本的には読者からの質問に対して答えることで終わっている。独特なイラストにより、シリアスな質問の中にもユーモラスな雰囲気が漂っている。売れっ子作家であっても他者におもねることなく、自ら考えて行動しているという信念を感じてしまう。

ノーベル文学賞をとるとるといわれていることについても、若干迷惑がっているようにすら思えてくる。作者の人となりがよくわかる流れなので、思ったよりも小難しい感じではない。強烈なインパクトはないのだが、作者のファンならば押さえておくべき作品だろう。

ファン以外には辛い作品かもしれない。



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