みみずくは黄昏に飛びたつ 


 2017.12.11      自分の文体に自信がある 【みみずくは黄昏に飛びたつ】

                     
みみずくは黄昏に飛びたつ [ 川上 未映子 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
川上未映子が村上春樹にインタビューする。ちょうど「騎士団長殺し」が出版されてすぐだったので、本作も便乗で多少話題になった。川上未映子はそもそも村上春樹のファンだったのだろう。内容がファン目線に偏っている。長大なインタビューだが中には非常に興味深いものもある。

村上春樹が自身の文体について自信があると語るくだりや、日本の作家の中ではトップレベルにあると語るなど、どちらかといえば謙遜するイメージの村上春樹なだけに意外な答えだ。同じ作家からインタビューされるということで、小説の書き方や翻訳に対するスタンス。さらには小説を書くにあたって何が一番重用かが語られている。

■ストーリー
芥川賞作家にして、少女時代からの熱心な愛読者が、村上春樹のすべてを訊き尽くす。騎士団長とイデアの関係は?比喩はどうやって思いつく?新作が何十万人に読まれる気分は?見返したい批評家はいる?誰もが知りたくて訊けなかったこと、その意外な素顔を、鮮烈な言葉で引き出す。11時間、25万字の金字塔的インタビュー。

■感想
村上春樹ファンならば外せない作品だろう。作中では「騎士団長殺し」について多く触れられている。自分は未読だが、特に問題なく楽しめた。逆に「騎士団長殺し」を読みたくなる効果がある。登場人物の分析やなぜそのような名前を付けたのか。

村上春樹は、何かと登場人物の名前をちょっと変わった名前にする傾向がある。「1Q84」の青豆や「騎士団長殺し」の免色など、名前が特殊であれば、それだけで強く印象に残っている。村上春樹的にはそんな効果は狙っていないと思うのだが…。

他の作品についても語られており、村上春樹の小説に対する取り組み方や、何を重視するかも語られている。エッセイでも語られていないものもある。小説ではストーリーよりも文体や文章の流れをなにより大事にしているようだ。

結局オチがどうなるかわからない作品を描いてはいるが、それは読者に想像させるためらしい。村上春樹としては、何が正しいだとか、どういう思いでこのストーリーを描いたというのはないらしい。あっても意味がないようだ。

自分の文体に自信をもつ村上春樹。日本でトップクラスだという。確かにそうかもしれない。今まで村上春樹がこんなことを言うのを聞いたことがない。どこかで謙遜していたのだが…。かなり正直な気持ちで答えているのだろう。文壇に否定され続けた時期。

こんどは自分が若い作家たちへどのような対応をするのか。やはり基本はひとりが好きな人なので、これからも群れたりすることはないのだろう。村上春樹文学賞なんてのを作るのは絶対にやめてくれ、というのが面白い。

「騎士団長殺し」を読む前に読んでみるのも良いかもしれない。



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