キャパへの追走 


 2017.11.10      探偵ナイトスクープ的探索 【キャパへの追走】

                     
キャパへの追走 [ 沢木耕太郎 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
キャパの物語を翻訳した作者が、キャパの撮った写真と同じ場所を探しだし、同じ構図の写真を撮影する。まさに探偵ナイトスクープ的な流れかもしれない。キャパの人生をたどるようにキャパの印象的な写真を元に場所を探し出す。ただの建物だったり、何の手がかりもない場合もある。それでも、現地の人から情報を得ながら写真の場所を探しだし、被写体に人が写っていれば、同じように人を含めて写す。

作者が写す写真がかなり良い味をだしている。あえてキャパの写した写真と微妙に被写体を変えている。男二人の写真を女二人にしたり。元の写真と意味合いは変わってくるが、作者の撮った写真の良さが表現されている。

■ストーリー
トロツキー、スペイン戦争、ノルマンディー上陸作戦…ロバート・キャパが切り取った現代史の重要場面の現場を探し、同じ構図の写真を撮影する。いつ、どこで、どのようにそれらは撮られたのか?世界中を巡る「キャパへの旅」から、その人生の「勇気あふれる滅びの道」が見えてきた。著者の永年にわたるキャパへの憧憬をしめくくる、大作「人物+紀行ノンフィクション」。

■感想
キャパの生涯を描いた作品を翻訳した作者。その流れでキャパが撮った写真と同じ場所同じ構図で作者が写真を撮る。どことなく作者の「深夜特急」を思わせるような旅行記的な面白さもある。キャパの人生を追いかけるように、キャパがその時どんなことを考えながら写真を撮ったのか。

同じ場所で作者はキャパになったつもりで写真を撮る。キャパについてはほとんど知識はなかったが、作者の作品を読むことで、どのような人物かわかってきた。それを補完する効果が本作にはある。

キャパが撮った写真の中でどの場所かわからない写真もある。それを作者は現地の人に話を聞きながら場所を探し出そうとする。何十年も経過しているので、街並みが変わることはある。それでも、変わっていないことに祈りをこめて、微かなヒントから探し出す。

キャパと同じ構図の写真を撮るためには、地べたに這いつくばらなければならない場合もある。現地の人を被写体として写真におさめることが難しい場合もある。それらをひっくるめて、現代によみがえるキャパの写真というのは強烈なインパクトがある。

驚きなのは、キャパが日本に来ていたということだ。情報としては知っていたが、日本のどの場所にいて、さらには日本人に写真を撮らせていたことにも驚いた。それらの写真がまるで写真館で撮った写真のように、すばらしいのがまた感動的だ。

有名人であるキャパが日本にやってきて、そこで日本人と交流する。その後を沢木耕太郎が取材する。ロバート・キャパは作者の訳がなければ知らない人物だったが、日本とここまで関係の深い戦場カメラマンだとは思わなかった。

作者のキャパに対する情熱を感じずにはいられない作品だ。



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