北の狩人 下 大沢在昌


 2015.10.23      ヤクザよりもえげつない堅気 【北の狩人 下】

                     
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■ヒトコト感想

上巻では雪人の正体と目的が明らかとなり、ヤクザとその関係者たちとの人間関係もはっきりしてきた。北の国から来た雪人が、目的を達成するために動き回る。雪人の父親を殺した人物とはいったい誰なのか。そして、過去の事件の秘密が現在の巨額の金が動く事件へと繋がっていく。雪人は新宿には不慣れなはずなので、ひとりだけでは目的を達成できない。

雪人には強力な仲間がいる。それは新宿の刑事ではなく、巨大な力を持つ台湾マフィアだ。巨大な偽札事件や中国マフィアとの関係。さらには面子の問題。様々な要素が絡みながら雪人が目的を達成する前に、過去の事件の関係者が殺されていく。組織間の綱引きがよくわかる作品だろう。

■ストーリー

ついに、北の国から来た男の正体と目的が分かった。その瞬間、新宿署の刑事だけでなく暴力団の幹部までもが息を呑んだ。「あの時の…」彼は十二年前に葬られた、ある出来事の関係者だったのだ。過去の秘密が次々に明かされていく。やがて彼は「獲物」を仕とめようと最後の賭けに出る。だがそこには予想だにしていない悲しい結末が待っていた。

■感想
十二年前に父親が殺された事件を調査するために新宿へとやってきた雪人。新宿に不慣れな雪人を助けたのは、地元の刑事や雪人の祖父に借りがある台湾マフィアの重鎮だ。それらの協力を得ながら雪人は父親殺しと関係あると思わしき人物を探り当てる。

ヤクザたちに金を貸して莫大なもうけを手に入れた新島やその手下の鴨下などをどのように追い詰めていくのか。本作ではヤクザよりもカタギの方がしたたかに動き回る印象が強い。どちらかというと、常にヤクザは後手に回っているという感じだ。

雪人は父親殺しの犯人にまで近づくことができた。その過程で、新島たちが画策する巨大な偽札ビジネスにたどりついてしまう。そこから物語は大きく変化していく。雪人ひとりではどうにもならない展開のため、巨大な組織の力を借りることになる。

そこから台湾マフィア、中国マフィアそしてヤクザとの三つ巴の戦いとなるのか、それとも、すべての鍵を握る人物が死ぬのか。どちらかしかない。お決まり通りすべての決断は雪人の行動にかかっているという流れとなる。

純朴で何もわからない田舎者である雪人が、田舎者とバカにするヤクザたちをばったばったと撃ち倒す爽快感が上巻にはあった。本作では、雪人の正体がばれたため、一般人をいたぶるヤクザがあべこべに返り討ちにあうというパターンはなくなった。

代わりに王道ともいえるハードボイルドの流れが待っている。女、ヤクザ、金、海外のマフィアたちとの駆け引き。それらの集大成としてのオチはある程度想定できるオチとなっている。

上巻の流れは新鮮だったが、下巻は王道というか平凡な展開だ。



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