2015.9.29 秋田の田舎者がヤクザをぶちのめす 【北の狩人 上】
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■ヒトコト感想
秋田の田舎者が新宿でヤクザを探す。冒頭から、新宿でキャッチにひっかかりぼったくりバーで痛い目を見る田舎者の典型的パターンが描かれている。が、その田舎者である雪人が、強力な柔道の技を駆使して、襲い掛かるチンピラたちをぶちのめす。方言丸出しだが堂々としており、ヤクザを一切恐れない男。
その純粋な行動は、ヤクザすらたじろがせる。雪人が新宿に来た目的は、父親を殺した人物を探し出すため。秋田県警の現役刑事が正体を隠してプライベートで調査をする。雪人の朴訥な雰囲気と、どんなにヤクザに囲まれようと、落ち着いた行動をとるのはキャラクターとして非常に魅力がある。
■ストーリー
新宿に北の国から謎の男が現れる。獣のような野性的な肉体は、特別な訓練を積んだことを物語っていた。男は歌舞伎町で十年以上も前に潰れた暴力団のことを聞き回る。一体何を企んでいるというのか。不穏な気配を感じた新宿署の刑事・佐江は、その男をマークするのだが…。
■感想
新宿に最も似合わない人種である田舎者。それも東北の方言丸出しで、ヤクザたちに相対する。周りの者は、新宿のヤクザの恐ろしさを知らない田舎者が痛い目を見ると思うが、あべこべにヤクザをのしてしまう雪人。このパターンは好きだ。
いかにも弱そうな男に対してチンピラたちが詰め寄るがあっさりと返り討ちにあう。実力をひけらかすことなく、ただ目的を達成するために新宿を歩きまわる。このキャラクターだからこそ、面白さが表現できている。いつもの、新宿に慣れきったキャラクターであれば、こうは魅力的にならないだろう。
現役の秋田の刑事である雪人。正体を隠しながら休暇中に新宿へとやってきて、十年以上も前に父親を殺した人物を追いかける。ヤクザだけの物語であれば、シンプルだろう。ヤクザ同士の抗争も想定できる。
が、本作ではヤクザとカタギが対決するように、ある意味、ヤクザ以上に恐ろしいカタギの存在が雪人を苦しめる。佐江という新宿の刑事の力を借りながら、調査を続けるのだが…。複雑な人間関係と、過去の因縁が雪人を迷わせることになる。
後半ではハードボイルド風味が強くなる。父親が殺された状況と、それに関わってきたと思わしき人物が浮かび上がってくる。が、雪人は強者に襲われることになる。新宿のことをよく知らない田舎刑事が、単独で調査するには限界がある。
お決まりどおり様々な協力者の存在により、雪人は真相へと辿りつけるのか…。上巻では黒幕は見えてこない。らしき人物は二人ほどいるが、どちらかはまったくわからない。
下巻へ向けて、雪人のキャラクターがどう変わっていくかも気になるところだ。
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