風は青海を渡るのか? 森博嗣


 2016.11.30      老いず死ななければ子供は不要? 【風は青海を渡るのか?】

                     

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■ヒトコト感想
Wシリーズ第3弾。子供が生まれない世界であっても、外界から隔離されたナクチュでは人を産むことができる。そこに調査におとずれたハギリの前にマガタ・シキの名前が登場してくる。森博嗣の作品はとことん真賀田四季が登場してくる。もはやこの天才の名前が登場することで、なんでもありな世界となる。

ウォーカロンが人間と変わらない状態となると、ハギリが研究する人間とウォーカロンを見分ける技術が重要となる。が、人間が人を産めなくなると、ウォーカロンがウォーカロンを産めるように進化するしかないという流れとなる。前2作と比べると危機的状況があるわけではない。マガタシキがウォーカロンとなんらかの関わりがあることはわかった。

■ストーリー
聖地。チベット・ナクチュ特区にある神殿の地下、長い眠りについていた試料の収められた遺跡は、まさに人類の聖地だった。ハギリはヴォッシュらと、調査のためその峻厳な地を再訪する。ウォーカロン・メーカHIXの研究員に招かれた帰り、トラブルに足止めされたハギリは、聖地以外の遺跡の存在を知らされる。小さな気づきがもたらす未来。

■感想
ナクチュ特区で調査をするハギリ。そこで謎の神殿が見つかり、マガタシキの痕跡を発見する。ハギリの命が狙われた前作と比べると、本作では危機的状況にはなっていない。新たなウォーカロンの謎が登場してくる。人が作った、人に限りなく近い人ではないもの。

そこにはやはり歪みがあるようで、ウォーカロンが暴走する可能性もある。それはウォーカロンメーカー内では周知の事実だが、一般には公表されていない。ウォーカロンの謎が深まる部分だ。

ウォーカロンの新しい事実としては、ソフトをアップデートしているということだ。それはウォーカロンの暴走を抑える役割もあるらしい。見た目は人とまったく変わらないが、人ではないモノ。人が人を産めなくなった世界では、ウォーカロンがウォーカロンを生み出すように流れるのは自然なことなのだろう。

ハギリがウォーカロンメーカーの人物と会話し、新たな世界が見えてくる。マガタシキの名前がでた瞬間に、ウォーカロンすらもシキの管理下にあるような印象となる。

このシリーズはどのような結末を迎えるのかまったくわからない。聖地で、貴重な人間の子供を見分けるデータを得たハギリ。そこからシキの影響力を感じ、どのように物語は変化していくのか。人が人を産めなくなったのは、老いることなく死ぬこともなくなったから。

ウォーカロンがウォーカロンを生み出すと、次は何が起こるのか。世界はウォーカロンだけになる可能性もある。人間でなければならない仕事がない世界。なんだか未来を見ているようで恐ろしくなる。

マガタシキの存在は万能なのか。



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