カレイドスコープの箱庭 海堂尊


 2015.2.24      初心に返り田口・白鳥コンビ 【カレイドスコープの箱庭】

                     
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■ヒトコト感想

ケルベロス肖像」で田口・白鳥シリーズも終わりかと思いきや、ほぼ雰囲気が変わらない本作となる。田口が医院長となる?なんてことは最初だけ、結局のところは今までと変わらず高階病院長にこき使われることになる。今回は病理医の誤診か検体の取り違えかが焦点となる医療ミステリーだ。

ミステリーと言っても摩訶不思議な世界ではない。患者が死亡した原因として誤診があったのかなかったのかが焦点となっている。いつものように、現在の病理医の問題が語られ、AIによってより良い医療が可能だと締めくくっている。オマケとして、バチスタで登場した桐生や速水が登場するのは、ファンにはうれしいことだろう。

■ストーリー

なぜか出世してしまう愚痴外来の元窓際講師&厚生労働省の変人役人の凸凹コンビ、最後の事件!閉鎖を免れた東城大学医学部付属病院。相変わらず病院長の手足となって働く田口医師への今回の依頼は、誤診疑惑の調査。検体取り違えか、それとも診断ミスか!?エーアイ国際会議の開催に向けて、アメリカ出張も控えるなか、田口&白鳥コンビが調査に乗り出した―。

■感想
いつものコンビが大活躍。特に今回は初期のシリーズに戻ったように白鳥が大活躍する。患者が死亡した原因として診断ミスがあげられ、それを調査する田口。田口は狂言回し的に事件を引っ掻き回し、読者をミスリードする役割を担う。

最近のシリーズならば、田口のお株を奪うように、その時々のメインキャラが問題定義し、勝手に解決してしまうのだが…。今回は白鳥が独自に調査し事件の真の原因を探り当ててしまう。久しぶりの王道な展開というか、作者の主義主張は抑え目に事件メインで描かれている。

作者の主張が抑えられているとは言っても、いつものごとくAIのアピールはすさまじい。話の流れ的には、あらゆるものよりもすぐれ、AIは絶対的に必要だ!という流れだ。AIがあったからこそ患者の親族からの訴えを退けることができた。

AIがなければ、医療事故として訴えられていたという流れだ。ここまでごり押しされると、逆にどうなのか?と思ってしまう。AI以外には病理医が足りない現状もしっかりとアピールされている。

本作では、シリーズのファンにうれしいオマケがある。「チームバチスタ~」に登場した桐生が再登場し、速水までもが戻ってくる。一時的とはいえ、各巻のメインを張っていたキャラたちが集まるのは、ファンにはたまらないだろう。

誤診か検体の取り違えかという、ちょっとした事件をドラマチックに描くのはすばらしい。白鳥が小憎らしいほどすべて準備万端で、最後の種明かしをするのは、いかにもミステリー的だ。シリーズとしてまだまだ続くことは確かで、作者の主張もよりパワーアップしそうだ。

巻末に今までの人物相関図が描かれているが、複雑すぎる…。



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