2014.7.13 バチスタシリーズの結末 【ケルベロスの肖像】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
「輝天炎上」が、バチスタシリーズの裏側なら、本作が表だ。しかし、表なだけに、メインのキャラクターに決着をつけなければならない。東城大学病院を破壊するという予告に対して、右往左往する田口。高階、白鳥、田口、そしてその他のキャラクター、ほぼ主要キャラすべてが登場し、事態の収拾にあたる。表は政治的色合いが強く、田口が高階に無理難題をふっかけられ、特殊キャラである東堂が天才的能力と、破たんした性格をアピールしている。
AIセンターが設立される日まで、事務手続きや自衛隊の戦車に田口が乗るなど、メインとは異なる部分でのゴタゴタが盛りだくさんだ。よけいなことばかりやらされるのが田口だからなのだろうが、いかにも田口メインの作品らしい流れだ。
■ストーリー
東城大学病院を破壊する―病院に届いた一通の脅迫状。高階病院長は、“愚痴外来”の田口医師に犯人を突き止めるよう依頼する。厚生労働省のロジカル・モンスター白鳥の部下、姫宮からアドバイスを得て、調査を始めた田口。警察、法医学会など様々な組織の思惑が交錯するなか、エーアイセンター設立の日、何かが起きる
■感想
東城大学病院を何者かが破壊しようとしている。その調査役を拝命した田口だが、そのほかの多種多様な雑務により、あまり真剣に調査できない。このあたり「輝天炎上」を読まなければ、どのようにして破壊計画が立てられ、誰が裏で暗躍しているのかわからない。どちらを先に読めば良いかというと、もしかしたら本作を先の方が良いのかもしれない。
ただし、その場合はひどくつまらない作品のように思えてしまうだろう。ゴチャゴチャとよけいなことに時間を使い、いつの間にか破壊工作が始まっている。「輝天炎上」を読んでいなければ、ただのお気楽な田口の物語だ。
バチスタシリーズのラストとして、様々なキャラクターが登場している。ラストには「ブラックぺアン」のことまで持ち出されている。すべてが繋がっていると改めて思わせられる作品なのだが、やはりシリーズをすべて読んでいないと楽しめないというのは辛い。
正直、キャラクターひとりひとりの個性は、既存シリーズを読んでこそ楽しめるものだ。何の説明もなく、いきなり彦根が裏で動き回り、南雲が因縁ありげに対立するなど、意味がわからないだろう。
先に「輝天炎上」を読んでいいたので、破壊工作の裏側はわかっていた。その上で読むと、物語を深く楽しむことができる。あとから仕掛けに気づけば、よりその衝撃は大きい。先にネタバレを読んで、その後に本編を読むというのは、おきて破りなのかもしれない。
バチスタシリーズがこれで終わるのか。ラストの展開だけ読むと、まだまだ田口たちは活躍しそうな気がする。それにしても最後までAIのメリットをひたすら主張する作品となっているのには驚いた。
シリーズを読み続けている人は、ぜひ読むべきだ。
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