デンジャラス 


 2018.1.30      谷崎潤一郎と女たち 【デンジャラス】

                     
デンジャラス [ 桐野夏生 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
ナニカアル」で林芙美子を描いた作者が、文豪・谷崎潤一郎とその周りの女たちを描く。どこまでが真実でどこからが創作かわからない。自分としても谷崎潤一郎の名前と有名作品くらいは知っているが、知識としてはその程度しかない。谷崎の義理の妹である重子が語り手となり物語をすすめていく。

そこには激しい嫉妬と、戦時中での困難な生活。そして、自身の不幸な境遇と、まわりの女たちが谷崎に頼らなければならない状況など、複雑な人間関係が描かれている。谷崎の家族は、戦中戦後にしては裕福な生活をしている。日々の生活のあれこれはすべて女中が行う。谷崎家の女たちは、優雅に暮らすだけ。だからなおさら、谷崎に寵愛される女が目障りになるのだろう。

■ストーリー
君臨する男。寵愛される女たち。文豪が築き上げた理想の“家族帝国”と、そこで繰り広げられる妖しい四角関係―日本文学史上もっとも貪欲で危険な文豪・谷崎潤一郎。人間の深淵を見つめ続ける桐野夏生が、燃えさかる作家の「業」に焦点をあて、新たな小説へと昇華させる。

■感想
谷崎潤一郎についてはそれほど深くは知らない。有名作品は、名前を聞いたことのある程度で、それ以外には何の印象もない。谷崎が様々な女たちを寵愛し、自分の作品の主人公には身近な女たちを用いていたということに驚いた。

作品がヒットすれば金が入る。谷崎家は裕福な暮らしをしつつ、同じく女たちも優雅な暮らしをする。昔の裕福な家庭というのは、日々の家事はすべて女中にやらせ、女たちが優雅に暮らすことが当たり前の時代だったのだろう。

谷崎の義理の妹である重子目線の物語である本作。義兄に寵愛されていた重子の前に新たに千萬子が登場してくる。これが重子の養子の妻という立場なので、重子からしたら子供のような存在であり、谷崎からすると姪っ子のような存在だ。

若い千萬子を寵愛する谷崎。いつの時代も、若い女にうつつをぬかしているところを、憎々しげに睨み付ける年増の女というのはありがちなパターンだ。本作でも、年甲斐もなく谷崎が千萬子に熱を上げると、重子がイライラしだすというわかりやすい展開となっている。

谷崎が作り上げた家族の中の四角関係。そこには、さまざまな状況があるにせよ、一筋縄ではいかない。有名作家は最後の最後まで女たちを寵愛しつつ、優雅に死んでいったのだろう。周りは、谷崎の存在があるだけに、すべてが谷崎中心に動いていく。

重子から見た谷崎。自分が谷崎に寵愛されていると気づいていながら振る舞う千萬子。重子の結婚人生がそれほど幸せではなかったことが、また千萬子に対しての怒りの気持ちへと繋がっていくのだろう。

強烈な女の嫉妬を感じずにはいられない作品だ。



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