ぼくのミステリアスな日常 若竹七海


 2015.8.1      最後の最後のオチが衝撃 【ぼくのミステリアスな日常】

                     
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■ヒトコト感想

匿名作家が、社内報のために連作短編を連載する。短編の内容としては日常の些細な謎や、オカルト、そして学園モノまで多種多様だ。どこかほっこりする短編もあり、長大なミステリーのネタになりそうなトリックまで、バラエティに富んでいる。いくつか印象的な短編がある。人の生き死にに関わらるモノや、感情を揺さぶられるような短編は印象に残っている。

連作短編臭と言っても、内容的に繋がりがあるわけではない。ただ、なんとなくだが、同一人物の周辺で起こった出来事だとうっすらと感じる程度だ。そのため、この短編を読んでいないと先を読んでも意味がわからない、という状態にはならない。ただ、ラストだけは衝撃的な事実が暴露されているので、驚くことは間違いないだろう。

■ストーリー

月刊社内報の編集長に抜擢され、若竹七海の不完全燃焼ぎみなOL生活はどこへやら。慣れぬカメラ片手に創刊準備も怠りなく。そこへ「小説を載せろ」とのお達し。プロを頼む予算とてなく社内調達ままならず、大学時代の先輩に泣きついたところ、匿名作家を紹介される。

■感想
連作短編集だが、重要なものとそうでないものがある。それほど重要ではなくとも、印象に残っている短編としては「内気なクリスマス・ケーキ」がある。巧みな叙述トリックというか、話し手の性別が大きなポイントかもしれない。

ある男の子と話し手と、その姉。三人の登場人物で展開される物語だ。当初は、男の子が姉に恋心を抱いているかと思いきや…。話し手に対して恋をしているのではないのか?と読者は感じてしまう。ただ、話し手は男なので、同性愛?なんていう流れが非常に良い。

オカルト的な雰囲気の短編もあれば、緻密なトリックの物語もある。短編の中では明確に謎が解明されないまま終わってしまっている短編もある。実はその短編は非常に重要であり、「ちょっと長めの編集後記」で衝撃的な真実を若竹七海が語りだす。

匿名作家の本名が明らかとなり、連作短編の意味が明かされることになる。ラストで全体を通してそれぞれの短編を分析する推理が展開されるとは思わなかった。この短編があることで、ひとつの作品として成立し、すべては計算されていたのだと気づくことになる。

「配達された最後の手紙」で、ちょっと長めの~の答えを示している。二段構えというか、ひとつのオチを連想させておいて、さらに別のオチを最後の最後に展開する。重要な短編を流し読みしていると意味がわからないだろう。

しっかりと短編の細かい部分まで読み込むことで、それなりに楽しむことができるようになっている。日常のちょっとした謎からオカルトまで、幅広く対応しているミステリーであることは間違いない。日常の謎が好きな人にはたまらないだろう。特に、北村薫作品が好きな人には良いかもしれない。

日常の謎の面白さが凝縮されている。



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