新しい15匹のネズミのフライ 島田荘司


 2016.8.27      本当はワトソンも能力は高い 【新しい15匹のネズミのフライ】

                     
新しい十五匹のネズミのフライ ジョン・H・ワトソンの冒険/島田荘司
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■ヒトコト感想
基本的にはホームズ関係の知識がないと面白さを味わえないだろう。ホームズの有名作品をモチーフとして、微妙な繋がりやキーワードを登場させている。「新しい15匹のネズミのフライ」という言葉それだけで物語の謎を作り上げている。大泥棒たちがどのようにして監獄から脱走するかという話だ。謎を解き明かす役であるはずのホームズが薬物中毒となり入院する。

となると、あとはワトソンが頑張るしかない。「まだらの紐」など名作を関連づけることで、ホームズファンを惹きつけている。ただ、内容としては単純なので、ホームズの知識がない人にとっては何が面白いのかまったくわからないだろう。マニアックな知識は必要ないが、最低限のホームズの知識は必要だ。

■ストーリー

「赤毛組合」の犯人一味が脱獄した!ワトソン博士のもとに、驚天動地の知らせが舞い込んだ。だが肝心のホームズは重度のコカイン中毒で幻覚を見る状態…。犯人たちの仰天の大計画とは。その陰で囁かれた謎の言葉「新しい十五匹のネズミのフライ」とは。

そして「赤毛組合」事件の書かれざる真相とは。果たして、われらがホームズが復活する時は来るのか―。さまざまなホームズ作品のエッセンスを、英国流のユーモアあふれる冒険譚に昇華させた大作。

■感想
シャーロックホームズの作品をある程度読んでいないとつらい。物語としてはシンプルであり、ワトソンとホームズの出会いから丁寧に描かれている。このあたり事前に知識がある方がより楽しめるが、なくても問題ない部分だろう。

偶然にも最近ホームズ関係の映画や、他の作家のホームズ作品を読んでいたので、物語にすんなり入り込むことができた。ホームズが非常に気難しく、拳闘の腕がすさまじく、そして薬物中毒者なんてことは、有名なホームズ像とはかけ離れているので、ホームズ初心者は驚く可能性がある。

本作はホームズシリーズで登場した悪役たちが、ホームズの推理により捕まったのだが、監獄から脱獄するという流れだ。どのようにして脱獄したのか。それは「新し15匹のネズミのフライ」という言葉にヒントが隠されている。この言葉だけでは何もわからない。

ホームズは薬物中毒で入院中なだけにワトソンがひとりで奮闘することになる。その過程で様々なアクシデントや女性とのちょっとしたロマンスまである。ホームズが大活躍するというのが定番ではあるが、ワトソンも実はそれなりに能力があるとアピールしたいのだろう。

ホームズの活躍を時系列にたどるだとか、ワトソンの結婚がいつだとかは意識してホームズシリーズを読んだことはない。が、本作ではそのあたりを綿密に研究した上で描かれているようだ。シリーズを読んでいれば
、新説としてシリーズの間を埋めるような形で楽しめるだろう。ベースを知らないと、ただホームズとワトソンが活躍する普通のミステリーのように思うかもしれない。タイトルになっているキーワードにしても、それ
ほど画期的なトリックというわけではない。

シャーロックホームズシリーズを読んだことのある人におすすめだ。



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