暗黒旅人 大沢在昌


 2015.7.2      マンガにありそうな設定 【暗黒旅人】

                     
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■ヒトコト感想

ホラーアクションとして、非常にマンガ的な物語だ。まだ見ぬ「使命」を果たすことを条件として売れっ子作家となった男と、売れっ子女優となった女が謎めいた事件に巻き込まれる。突如として頭の中に強烈なイメージが浮かび上がる。そこから日本を滅ぼそうとする組織や、謎の人物たちとの対決が待っている。人間の欲望と腹黒い部分が凝縮されたような対決相手たち。

オカルト風味満点の作品で、マンガのテーマとして存在しそうな流れだ。体が腐る腐水が人を若々しく保つことや、その他、日本を滅ぼすような特殊な秘宝の存在など、強烈なホラー的雰囲気がある。使命とういマンガ的展開についての説明がいっさいないのが気になるところだ。

■ストーリー

売れない作家と芽のでない女優。不遇の日々に疲れ果て樹海に潜り込んだ恋人たちの前に謎の老人が現れる。「成功を授けよう。ただし男女の仲を捨て、男は『使命』を受けろ」。九年後、富と名声を得た男のもとに、奇怪なイメージが飛来した。男は直感する。「使命」を果たす時が来たのだ、と。ホラー&アクション。

■感想
四つの使命を果たすことの代わりに作家として成功した御岳。使命は「水」「火」「木」「土」の四つの自然現象から作り上げられている。使命を果たさない場合は、大量殺人や日本がつぶれるなど、強烈な状況が待っている。なぜ、御岳が使命を果たさなければならないのか。

使命の必然性はよくわからない。主人公である御岳には使命を果たすべき状況をイメージで見ることができる。が、能力としてはただそれだけしかない。そのため、いざ肉体的な戦いになると、御岳は特別な強さを発揮することはない。

御岳が使命を果たすために相対する敵は不気味だ。体を腐らせる腐水を利用し、大量殺人を計画する男や、日本を沈没させようとする男など。若干ハードボイルドの主人公風な御岳ではあるが、銃の腕がずば抜けているとか、激しい戦いから切り抜ける術を知っているわけではない。

となると、巨大な敵に対して御岳の味方が必要となる。それが刑事の樫村だ。御岳の周辺で発生する怪しげな事件を捜査する刑事。御岳をしつこく尾行し続けて、偶然にも御岳を助けたりもする。樫村はいわば困った時の御岳の助っ人という感じだ。

御岳は売れっ子作家となり、使命を果たす過程で、美しい女性と体の関係となる。このあたり、作者の作品ではありがちな展開だ。不遇な時代を共に過ごした女優の由子とは、売れっ子となるために関係を断ち切ることになる。

作者の作品では「黄龍の耳」がマンガ原作として存在している。本作も同じくなんらかのマンガ原作になりそうだ。敵キャラが個性豊かで、ホラー的要素が強い。が、主人公に戦いに特化した特殊能力がないことが、もしかしたらネックなのかもしれない。

作者の「新宿鮫」シリーズとのギャップに驚く人もいるかもしれない。



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