黄龍の耳 大沢在昌


 2015.4.19      すさまじい金運のモテ男 【黄龍の耳】

                     
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■ヒトコト感想

黄龍の耳のイメージとしてはマンガだ。本作が原作として存在しているとは知らなかった。内容としては非常にマンガ映えしそうなものだ。代々、たぐいまれなギャンブル運と女性を惹きつける力をもつ希郎。女にモテモテで、ギャンブルに強いなんてのは、いかにもマンガ的設定だ。金運がすさまじいので、カジノでバカ勝ちするなんてのは納得できる。が、まったく格闘技経験がないにも関わらず、強烈な運の強さで、襲ってきた敵を倒すなんてのはやりすぎのような気がした。

絶体絶命のピンチにおちいると、建物が崩れピンチから脱出する。強運という説明だけでは済まされない流れだ。作者の作品の中では異色な部類だろう。女には奥手だが、女が周りに寄ってくるという、わかりやすいモテ男でもある。

■ストーリー

古代中国の皇帝の血をひく男、第四十五代棗希郎右衛門。彼には類まれなる金運と、すべての女性を魅きつけずにはおかない力がそなわっていた。これが伝説の「黄龍の力」だった。その証として希郎の右耳には小さな穴が開いていた。数奇な運命に導かれた彼を待っているものは、北ヨーロッパ、アメリカそして日本と舞台を移しながらの、宿敵・巳那一族との凄絶な闘いだった。

■感想
生まれながらにして強力な金運と女性を惹きつける魅力をもつ男。特徴的な耳のピアスを外すと、そこから力をはっきする。ルーレットではバカ勝ちし、美しい美女が寄ってくる。序盤では希郎がとまどいながらも、自分の能力に気づき始めることからスタートする。

希郎の能力はよくわかるのだが、その応用具合がすさまじい。まったく格闘技経験のない希郎ではあるが、喧嘩でピアスを外すと、そこでも強運をはっきして、敵を倒してしまう。あまりに都合がよすぎないか?と思ってしまう。このあたり、マンガであればわかりやすい展開となるのだろう。

宿敵の巳那一族との対決は、まさにザ・マンガだ。男を出世させる能力に長けている女系一族。お決まり通り、希郎には代々希郎の一族に使えてきた弁護士や、仲間たちの存在がある。いくら金運があり、女にモテたとしても、それまで海外にいた男に日本での仲間はいるはずがない。

希郎が困難な状況におちいったとしても、必ず誰かの助けがある。予定調和的だと言えなくもない。金運があり、イケメンでやさしく紳士的。そして、正義感が強い。ここまでそろうと、もはや何の文句もない。が、面白味もない。

全体としてヤングジャンプとかに掲載されそうな、青年マンガ的展開に満ちている。少しのお色気と激しい格闘。最後まで納得いかないのは、強運ですべてを乗り切ってしまう部分だ。お互い拳銃を手に持ち、背中を向けて十歩歩き、振り向いて銃を撃つ。

銃の扱いに素人な希郎がこの勝負に勝つ可能性は低いはずなのだが…。土壇場で、いつもの建物崩壊がまっている。困った時の建物崩壊だ。希郎自身にピンチから抜け出す力がないため、周りが希郎を助けるしかない。毎回、建物の崩壊でピンチから脱するとなると、ワンパターンと感じてしまう。

マンガ原作らしい小説だ。



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