GOSICKs4 桜庭一樹


 2015.11.24      終極前の明るい日常 【GOSICKs4】

                     
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■ヒトコト感想

GOSICKシリーズの外伝的短編集。すでに本編は一区切りついているため、新たな展開を外伝に求める感じなのだろうか。内容的には、過去の秘密をメインとして扱っている。キャラクターはいつもの安定したメンバーであるため、フレッシュさはない。ただ、ファンにはたまらない展開が多々ある。リビング・チェス大会というのもポイントなのだろう。

ヴィクトリカや久城はもちろんのこと、クレヴィールやアブリル、そしてブライアンとブロワ侯爵など、ヴィクトリカの出自に関わるような重大な過去の秘密まで明かされている。本作で外伝も最後なのだろうか。今までシリーズで消化不良だった部分を補完するような内容となっているため、ファンには欠かせない作品となっている。

■ストーリー

クリスマス前日、聖マルグリット学園は、最大のイベント“リビング・チェス大会”の準備で騒がしい。そんな中、いつものように独り読書にいそしむヴィクトリカ、彼女の退屈を追い払うため図書館塔を上る一弥──グレヴィールの初恋、アブリルの思い、ブライアンとブロワ侯爵の静かな戦い、そして──降りしきる雪の中解き明かされるのは、それぞれの“秘密”──名コンビ最後の平穏な日々を描く、大人気ミステリ外伝。

■感想
まず、大前提としてGOSICKシリーズを読んでいる必要がある。キャラクターの関係性について説明がないため、シリーズを読んでいないとまったくわけがわからないだろう。純粋にミステリーとして読むには辛い作品であることは確かだ。

シリーズのキャラクターたちの性格や、立ち位置を把握し、短編で描かれる出来事を頭の中で思い浮かべる。リビング・チェスという一大イベントにより、キャラクターたちがそれぞれに動き出す。過去の回想や、思い出を語る中で、当時のミステリアスな状況をビクトリカが解き明かす。定番ではあるが安定した流れだ。

終わりが見えてきたシリーズの、最後の平和な日常を描いているのだろう。印象的なのは、脇役的扱いであるグレヴィールの初恋の話だ。過去にヴィクトリカが解決した事件の裏側というか、内容を補完する作品なので、過去の事件を覚えている必要がある。

グレヴィールの初恋の相手が警視総監夫人のシニョレーであったこと。若かりしころのグレヴィールのなんとも小心な部分と、シニョレーの男っぽさがありながら、魅力溢れるキャラクターに作り上げられているところがすばらしい。

シリーズ最終巻へ向けての最後の平和な日常ということで、ほぼすべてが明るく楽しいものとなっている。本作からGOSICK8へと繋がるのだろう。集大成の前に、すべてのキャラクターが明るく楽しく過ごし、学園の子供たちが帰省していく中で、ひとり取り残される形になったヴィクトリカ。

なんともラストへと繋がる流れとしては、強烈な引きの強さがある。すでに最終巻を読んでしまっているだけに、また違う感想がわいてくる。何も知らずに本作と読むと…。最終巻が楽しみで仕方がないだろう。

シリーズの外伝としてはしっかりとまとまっている。



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