2012.8.2 いつになくシリアスな展開 【GOSICK8 上】
評価:3
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■ヒトコト感想
このシリーズもとうとう終わりが近づいてきたのだろう。ヴィクトリカと久城の関係が深まりつつあり、それが崩壊へと向かう。前半は、短編シリーズのように、ちょっとした謎をヴィクトリカが鮮やかに解決していく。ヴィクトリカと久城の最後の楽しいひとときというように、なんの問題もなく物語は進んでいく。それが後半になると、第二次世界大戦が始まり、それと共にヴィクトリカと久城が離れ離れになる。今までになく暗く陰鬱な雰囲気となり、この先には、とんでもない不幸が待ち受けているようにも思えてくる。ヴィクトリカの存在理由と、科学アカデミーとオカルト省の対立には深い理由があった。下巻へ向けて、暗黒の時代を連想させる始まりだ。
■ストーリー
クリスマス当日、ヴィクトリカが所望したのは、15個の謎―必死で謎を集める一弥は、村に起こりつつある異変に気づく。それは、大いなる変化、すなわち“2度目の嵐”の前触れにほかならなかった。迫る別れと、自分の運命を正しく予感したヴィクトリカは、一弥にある贈り物をする。一方首都ソヴレムでは、ブロワ侯爵が暗躍、娘ヴィクトリカを武器に権力を握ろうとしていた
■感想
序盤の15個の謎は、ヴィクトリカと久城の仲の良さを表現すると共に、その先に待つ暗黒を暗示するような異変が起こる。久城が村で、ヴィクトリカが満足するような謎を探しだし、それをヴィクトリカが解く。いつもどおりの夫婦漫才風なやりとりが続き、いつものシリーズとなんら変わりはないものと思っていた。それが、ヴィクトリカが連れ去られ、戦争の始まりと共に久城は故郷へと帰ることになる。離れ離れになった二人は、その後再び出会うことができるのか。いつになくシリアスな展開となっている。
故郷の日本へ帰る久城。ここでは、第二次世界大戦が始まるということで、終始暗い雰囲気となる。成長した久城であるが、傍らにヴィクトリカがいないことで、全体のトーンが暗く悲しいものとなっている。ヴィクトリカやセシルがいないことで、ユーモアの部分がなく、ひたすら久城の成長した姿と、悲しみだけが描かれている。そのため、戦争の悲惨な雰囲気がさらに増幅されている。遠く離れ離れになった二人が、どのような経緯で再び出会うのか。そのあたりの流れも下巻に向けて非常に気になってくる。
特殊な力をもつヴィクトリカ。ヴィクトリカ個人の力で戦争を止めるなどできるはずもない。しかし、オカルト省に良いように使われるだけでは終わらないのだろう。物語として、すべてがまるく収まることはない。何かしら犠牲があり、悲しみがありつつ、かすかな救いのある結末なのだろう。この長いシリーズの終わりをどのような形にするのか。広げた大風呂敷をたたむことができず、精神世界の話で終わらせたりせず、はっきりとした結末を求めてしまう。
下巻では、とうとうこの長いシリーズが終わるのだろう。
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