スリジエセンター1991 


 2014.4.7    天才外科医の結末は… 【スリジエセンター1991】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

ブレイズメス1990」から続く物語。天才外科医の天城がスリジエセンターの設立に成功するか否か。シリーズを読み続けている人ならば、その結末はすでにわかっている。シリーズとして、過去の物語が描かれているので、結論ありきの物語だ。ただ、その結論に至るまでに、どのような物語があったのかが非常に興味深い。

天才天城であっても、失敗の可能性がある手術。突然のアクシデントにより、手術中に患者が死ぬ可能性すらある。そんな状況をどのようにして乗り切るのか、はたまた…。天才外科医と教授たちの権力闘争や、才能あふれる研修医・速水の登場など、すでにおなじみのキャラの過去を読むことができるので、結論がわかっていても楽しめることは間違いない。

■ストーリー

手術を受けたいなら全財産の半分を差し出せと放言する天才外科医・天城は、東城大学医学部でのスリジエ・ハートセンター設立資金捻出のため、ウエスギ・モーターズ会長の公開手術を目論む。だが、佐伯教授の急進的な病院改革を危惧する者たちが抵抗勢力として動き始めた。桜宮に永遠に咲き続ける「さくら」を植えるという天城と世良の夢の行く末は。

■感想
世界でただひとり、天城しかできない手術。そんな天才が目的とするのは、スリジエハートセンターの設立。お決まり通り、天城の邪魔をする様々な勢力が登場するが、天城の天才的な技術と機転をきかせた行動により、すべてをクリアしたかに思えたのだが…。天城の鮮やかな立ち回りには毎回驚かされてしまう。

メインシリーズでは病院長となり、有象無象を退けてきた高階でさえ、天城にはかなわない。正義の印象が強い高階が、本作では裏で怪しげな動きをする悪者扱いになっているのが特徴かもしれない。主役が誰かによって、こうも印象が変わるキャラクターもめずらしい。

本作では若き速水も登場する。研修医として、すでに早くから注目される存在となり、天城や世良に目を掛けられる。「極北ラプソディー」での世良と速水のやり取りから、何か因縁めいたことが起きていたのだと想像したが、やはり強烈なインパクトがある。

天才は天才に引き付けられるのか。天城と速水がもしそのまま師弟関係となっていたら…。なんだか夢を感じるような物語だ。天城や速水に比べると、高階はずいぶんとこじんまりとした印象しかない。天城のかっこよさがすべてをかっさらっている。

物語の結末は予想通りだ。他の物語に世良は登場しても天城は登場しないことから、想像できたのだが…。キャラクターとして非常に立っていたので、このキャラが今後登場しないのは残念だ。医療には金がかかるとという主張を繰り返し、かと思えば、生活保護者の手術については鮮やかな理屈を述べる。

黒崎、高階、天城という三本柱の中で、天城は特異なキャラであることは間違いない。このシリーズでは、天才外科医が数多く登場するが、そのほとんどが本流から外れている。現代の医療に突出した天才外科医は必要ないということなのだろう。

本作のような過去を描いた作品はまだ続くのだろうか。



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