スカル・ブレーカ 


 2014.6.24     一対多の戦い方 【スカル・ブレーカ】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

ヴォイド・シェイパシリーズ第三弾。都へ向かうゼンの放浪の旅を描いているのだが、本作は前ニ作ほど剣の真剣勝負はない。大人数に対して戦いを挑むゼンが、どのような考えで剣をふるうのか。武士の鎧が必ずしも戦いに有利にはたらくわけではない。ゼンひとり対多数の戦いがメインとなっている。放浪の旅の定番として、ゼンを追いかけるノギの存在がある。

相変わらず純真無垢でとぼけた反応をするゼンと、にぶく朴念仁なゼンにいらつくノギ。二人の掛け合いが漫才のようで面白い。何に対しても素朴な疑問をもつゼン。ゼンのキャラクターづけはすでに過去作品でされているため、本作でもここまでしつこくやる必要があるか疑問だが、徹底してゼンの世間知らずさが描かれている。

■ストーリー

誰より強くあっても、すべてを知っていても、死ねば消えてしまう。それなのに、何故求めるのか。そう…。立ち向かおう。いつも、命を懸けて、ただ剣を振れば良い。生きているから、恐くなる。しかし、剣を持てば、もはや生きた心地は消える。だから、恐くない。

■感想
世間知らずのゼンが旅の途中で様々な疑問に出会う。世間では当たり前のことをゼンの真っ白な心は疑問に感じてしまう。中には、確かにおかしい、と思うこともある。このあたり、無垢なゼンを通して、合理主義者である作者の疑問を代弁させているような気がした。

ゼンの語る言葉には悪意はないが、他人をイラつかせたり、嫌悪感を与えたりもする。そんな中で、ノギとの関係が妙に面白く感じてしまう。ゼンに気があるノギと、何も知らないゼン。ノギのいらだつ気持ちは伝わってきた。

本作では今までのシリーズのように一対一のひりつくような戦いはない。剣の戦いといえば、向かい合い、一瞬で勝負がつく印象だ。本作では一対多の場面が描かれており、ゼンがどのような戦い方で多数に対して相対しているのかが詳細に描かれている。

侍がつける鎧兜にどういった意味があるのか。剣の戦いではあまり意味がないとも語る。合理主義者であるゼンからすると、スピードが落ちる鎧には、なんのメリットもないらしい。

新たな剣の達人が登場し、ゼンと試合のようなことをするのだが…。戦わなければ負けることはない。ゼンのスズカ流は相手の剣を受けない流儀だが、そのさらに上をいく、戦わないという流儀がある。ゼンはまだ発展途上であり、これから様々な剣士と出会うのだろう。

その成長過程で、ゼンの生い立ちを含め明らかとなることだろう。シリーズとしてどのようなラストを想定しているのか。本作では都へ向かう準備段階といった感じだろうか。ゼンの出生について新たな真実が判明し、がぜん物語は盛り上がってきた。

シリーズとしては、中休み的な感じだが、重要なキャラが登場している。



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