眠りの家 


 2014.9.14      ハードボイルドだけではない短編集 【眠りの家】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

ハードボイルドな短編集。と言いつつも、ハードボイルド以外の要素が含まれている短編がある。超能力的なものをもっていたり、ミステリー要素が強かったり、心霊現象的なものまで、バラエティに富んでいる。雰囲気として、恐ろしくなる短編まである。特に「一瞬の街」などは、連作短編として続くのでは?と思わせるほど、導入部だけのような印象すらある。

未来を予言する特殊能力がある兄を持つ男の話なのだが、どことなく恩田陸作品のような雰囲気すらある。続きがあるのならば読んでみたいと思わせる流れだ。表題作である「眠りの家」は、ハードボイルドというよりミステリーの短編といった方が良いような作品だ。

■ストーリー

学生時代からの友人潤木と吉沢は、外房のひとけのない磯の先端に奇妙な建物を発見した。前面は絶壁の荒磯、背後は通行もままならぬ深い山が迫っている。見ようによっては軍の施設にも見えた。いったい誰が、何のために作ったものなのか?興味を持った彼らは、後日釣人を装い調査を始めたが…。(眠りの家)。表題作、名作「ゆきどまりの女」他、全6編を収録

■感想
表題作である「眠りの家」は、強烈なインパクトがある。外房の磯の先端にある奇妙な建物があった。そこにはとんでもない秘密が隠されていた…。建物に出いりする白衣の女と、明らかに不自然な建物の作りから、何かあるのでは?と思わせる。

秘密を探り出す過程は、釣り好きの作者らしく、釣りの細かい描写がある。そして、建物の秘密が明らかとなる瞬間は強烈だ。ミステリーだけでなく、どこかSFを感じさせるオチでもある。

「ゆきどまりの女」は、正統派なハードボイルドと言って良いだろう。殺し屋がある女の始末を依頼される。条件はただ一つ、始末する前に女を抱けということだった…。ハードボイルドは基本的に男が主人公だ。が、本作は女に強烈な個性がある。

女の元にやってくる男たちを、無条件に受け入れる女。ことが終わった後に…。いくら殺し屋であっても無防備な瞬間はある。タイトルが良く内容を表している。女の元へ向かった男たちは、ゆきどまりに直面することになるのだろう。

「人喰い」は、奇妙な恐ろしさがある。男は道端で女を拾う。若いが魅力ある女と思いきや、女と肉体関係を結んだ男たちは、悲惨な死に方をしていた…。幼いと思った女が、その場その場で表情を変える。そして、女は相手の心に深く突き刺さる人物の声を出すことができる。

女には何かしらその場で雰囲気を変える力はあるのだろう。それを具体的に表現したのが本作だ。ただ、嫌だと思った相手を自殺に追い込むような声を出せる女は恐ろしすぎる。

単純なハードボイルドではない短編ばかりだ。



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