真夏の方程式


 2014.7.7     あまりに無慈悲な手段 【真夏の方程式】  HOME

                     
評価:3

■ヒトコト感想
原作を読んでいるだけに、原作と比較してしまうが、うまく映像化している。「容疑者Xの献身」のように、純粋にどのようなトリックを使ったのかわからない、というたぐいの作品ではないため、どうやって観衆の興味を引きつけるかがポイントだ。本作ではそのあたり、しっかりと押さえられている。

事件の概要は早いうちに明らかとなり、事件関係者の子供を想う気持ちが強く伝わってくる。が、なにより強烈なのは、湯川と少年の関係だろう。原作を読んで頭の中で想像した映像そのままが、画面にあふれている。映像化する上での演出も多数付け加えられており、より湯川と少年の関係が強固に描かれている。原作の面白さを忠実に再現した作品だ。

■ストーリー

「ガリレオ」シリーズの劇場版第2弾。手付かずの美しい海が残る波璃ヶ浦。開発計画の説明会にアドバイザーとして招かれた天才物理学者・湯川は、宿泊先の旅館でひとりの少年・恭平と出会う。その翌朝、堤防下の岩場で男性の変死体が発見され…。

■感想
冒頭からガリレオの強烈なキャラが炸裂する。電車内で電話する少年にアドバイスし、開発計画の説明会では、開発に反対する住民に対して正論を吐く。感情を表にださず、合理的に会話するその姿は、相変わらず偏屈な人物の印象を植え付けるには十分すぎる演出だ。

それだけに、宿泊先の旅館で知り合った少年と交流をもつ湯川というのは意外だ。明らかに子供嫌いな雰囲気をだしながらも、なぜか恭平とだけ仲よくする。冒頭のイメージとのギャップにより、湯川の好感度が上がる場面だろう。

男の変死体が発見され、そこから過去の事件へと繋がる因縁が語られることになる。正直、このあたりは、人物同士の心の交流や強固な関係性が描かれてはいるが、事件としての不思議さはない。どことなく、「容疑者Xの献身」のように、他人のために自分を犠牲にするパターンなのだが、そこにはあまり感動はない。

その後、湯川が早い段階で事件のからくりを見抜くあたりが、強烈だ。なぜ、そこからその結論に達するのか。あまり説明はされていないが、湯川の超人的推理力が表現されている。

事件がどのようにして起こったのか。湯川の解説によりあっさりと全容が明らかとなる。本作のメインは、誰が手を下したかということだ。それまでの巧みな伏線により、事件の手段を暗示させる映像を交えながら、ある人物が手を下したという結論へいたる。

原作を読んだときも感じたことだが、あまりにも無慈悲な手段だと思った。何の自覚もなく、知らないうちに自分が人殺しの手伝いをしていたと知ると、人はどうなるのか。湯川がそのことに苦悩するのが、本作のすべてかもしれない。

原作の良さは十分表現されている。



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