容疑者Xの献身


 2009.6.19  この衝撃は原作を超えたか 【容疑者Xの献身】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
原作は直木賞を受賞したすばらしい作品だ。そんな原作をどの程度うまく表現できているのか。テレビドラマの印象からすると未知数だったが、とてもよくできていた。原作の良い部分がすべてつまっており、最後までトリックが予想できない物語の展開はすばらしい。特に石神役の堤真一は、原作とは違った風貌だが、十分石神の役割をはたしている。実直で朴訥な天才数学者はいったい事件とどのようなかかわりをもっているのか。巧みな演出で、事件の真相を隠しつつ、石神の仕掛けを最後にはっきりとさせる。石神の表情一つが全てを物語っている。観衆は石神に対して様々な印象をもったことだろう。最初はさえない男、中盤は変質的なストーカー、そして、最後は純愛を貫いた男。恐らくこの石神役がダメあったら、とたんに駄作となっていたことだろう。原作に負けないすばらしい作品だ。

■ストーリー

貝塚北警察署の刑事・内海から殺人事件の相談を受けた湯川学は、かつての親友である天才数学者・石神哲哉が事件に深く関わっているのではと疑念を抱き…。

■感想
原作もそうだが、本作も最後までトリックを予想することができないだろう。トリックが暴かれるほんの三十秒前であっても、気付くことはない。それでいて、トリックを明かされると、目からうろこというか、そこまでやるかという強烈な驚きがまっている。それまでの様々な伏線と、あちこちにちりばめられたヒントの数々。正直言うと、原作を読んでいただけに、それらのヒントや伏線に気付いて、さらに楽しめたというのがある。もし原作を読んでいなければ、最後のタネ明かしでの衝撃度は大きいが、様々な伏線を見逃していたことだろう。原作を読んでいたからこそ楽しめたという作品だ。

石神以外にも脇を固める俳優たちの演技はすばらしい。主演の福山が微妙というのはあるが、あれはあれでキャラクターとして成り立っているから良いのだろう。しっかりとした土台ができた作品は、シリーズを見ていた者には入り込みやすい、しかし、シリーズを未見の者には厳しい可能性があるが、本作はそんなことは一切関係ない。事件が発生し、それを物理学者が推理するという単純な構成だからだ。もはや刑事の内海や草薙などほとんどどうでもよくなっている。重要なのは、本作の中で語られる湯川と石神の関係であり、二人の頭脳戦なのだから。

原作の期待を裏切らないできになっている。逆に原作以上にわかりやすくなっている箇所もある。映像化することで、そのものはっきりを目に見せることで、不自然なトリックではないという説得力。事件の本質は別のところにあるという事実に、原作ではまったく気付かなかった。それは映画版でも当然のことだが、良く見れば、そのヒントはあちこちにちりばめられている。原作やシリーズを見たことがない人に聞いたところ、十分楽しめ、最後のトリックには衝撃をうけたらしい。石神の純愛に対する強い思いを感じるのも、もしかしたら原作以上かもしれない。無謀なことをしない天才数学者を突き動かした純愛。それは画面からにじみでていた。

ガリレオシリーズ未見でも十分楽しめる。




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