一路 下 


 2014.2.25    人の上に立つ者の心がまえ 【一路 下】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

上巻から引き続き、参勤交代の一行はちゃくちゃくと江戸へと近づいている。道中でのお殿様の発熱あり、命を狙う者あり、一路に恋をする姫様の存在あり、大雪の中の行軍ありと今回も盛りだくさんだ。道中にどんなアクシデントが起こったとしても、一日の遅れも許されない。無断で遅れたとしたら、おとりつぶしも免れられない。そんなプレッシャーのかかる道中に限ってトラブルは起こる。

絶体絶命の危機に直面するが、偶然や周りの助けにより危機を乗り越える。中でも一番インパクトがあるのは、遠足の秘術を持つ者たちだ。今で言うマラソンなのだが、その距離とスピードが桁違いだ。3人並んで走り、風よけ役が随時変わっていく。ありえないことだが、ワクワクしてくる。

■ストーリー

江戸参勤は実に行軍である。雪の和田峠越え、御殿様の急な病、行列のなかで進む御家乗っ取りの企み。着到遅れの危機せまるなか、一行は江戸まで歩みきることができるのか。江戸までの中山道で繰り広げられる悲喜こもごも。

■感想
参勤交代道中でのトラブルは多種多様だ。大雪の中の行軍では、当然ながら雪深い山道に苦労する。一日も遅れられないという危機感から前に進むのだが、想像を絶する道程なのだろう。そんな中でも一路のリーダーシップとお殿様が”うつけ”と思われていたが、実は切れ者だったという流れは良い。

何か粗相があれば、即座に切腹が待つ世界というのは恐ろしいほど緊張感に満ちた世界なのだろう。そんな世界であっても、お殿様のすべてを見通したような行動には心打たれてしまう。

道中でお殿様が発熱し足止めをくう。そこで登場するのが謎の遠足を使う者たちだ。朝飯前に数キロを走る。塩と水だけで百キロ以上を数時間で走り切ってしまう。なんともめちゃくちゃな話だが、一路たちの危機を救うために大活躍する。この荒唐無稽感が良い。

江戸時代ならば、こんなむちゃもあたりまえにやっていたのではないかと思えてくる。さらには、地元特産の葱を食べ頭に巻くことで、お殿様の熱はたちどころに下がってしまう。もはやコメディとしか思えないが、シリアスとコメディのバランスが良い。

ラスト間近では、怒涛の展開が待っている。お殿様の命を狙う存在は、謎の浪人により退治され、無事江戸に到着したは良いが…。上巻が一路の奮闘を描いたのに比べ、下巻はお殿様の活躍や人間味あふれる行動に心打たれてしまう。厳しいしきたりの中でも、自分の信念を貫き通し、なおかつ相手のことを考えて行動するお殿様。

一歩間違えればおとりつぶしになる可能性がありながら、躊躇しない。”うつけ”と言われた人物が、実は世間より身を守るため、わざとうつけのフリをしていた。その能力が発揮されると、とたんに周りは影響を受けてしまう。

上下巻合わせて、人の上に立つ者の心構えのようなものを感じてしまった。



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