一路 上  


 2013.8.8     まるでプロジェクトマネージャーだ 【一路 上】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

参勤交代をテーマとした作品は初めて読む。参勤交代というと、ただ地方から江戸へ上京するだけかと思っていた。が、当然、殿様一人で歩いて江戸へ向かうはずもなく、何十人ものお供を引き連れて江戸へ向かう。となると、その道中の宿やその他の手配やしきたりを守るのは大変なことだ。そんな参勤行列を差配することになった一路の奮闘を描いている。

到底無理だろうと諦めかける一路に、様々な助けが入る。不可能なことを成功させるために試行錯誤する姿というのは、なんだか感動してしまう。偶然の要素があるにせよ、周りの助けでうまく進んでいく様は見ていて心地良い。上巻ではまだ道半ばだが、出発前から問題が山積みで、それをひとつづつ解決していくのは、気持ちが良い。

■ストーリー

父の急死により家督を相続、交代寄合蒔坂家の御供頭として、江戸への参勤行列を差配することになった小野寺一路。家伝の「行軍録」を唯一の手がかりに、中山道を一路、江戸へ――。

■感想
一路が参勤交代のすべてを仕切る。たとえお殿様であっても仕切り役には逆らえない。そんな力を持つがゆえに、何か少しでも不備があったなら、腹を切らなければならない。何も知らない状態で突然過酷な仕事を与えられた一路。そのプレッシャーは並々ならぬものだろう。

一路の苦悩は、時に自暴自棄にも感じてしまう。が、周りの助けにより、少しずつ先が見えてくると、そこから一路は不屈の闘志で参勤交代を成功させようとする。なんだか、現代の自己啓発系の本に近い、困難に立ち向かう心構えのようなものを感じてしまった。

一路は仲間たちの助けでなんとか参勤交代をスタートさせる。そこから道中ではさまざまな問題が発生する。このあたりも、プロジェクトを進めていく上で直面した問題にどう対処していくのかに近い。一路の対応、というよりは、周りの助けでうまく進んでいくのだが、中にはニヤリと笑えるような場面すらある。

辛く苦しい道中をどのようにして乗り切るのか。スケジュールどおりに宿に到着しなければ、多くの人に迷惑がかかる。まさに一路が考えることは、現在のプロジェクトマネージャーに通じる部分だろう。

ただ、江戸へ向かうだけではない。お殿様の地位を狙うやからの存在を感じる一路。明確な善悪が存在するわけではない、登場人物ひとりひとりにそれなりの理由があり、道中で様々な行動を起こす。まるで一話完結型の小説のように、ちょっとした問題が発生し、それが解決するというのが繰り返される。

冒頭で「行軍録」の一文が登場し、問題を先取りした説明がなされている。参勤交代の物語と聞いて、あまり面白そうに感じないかもしれないが、かなりの良作だ。一路が唯一の手がかりである「行軍録」をたよりに、問題を解決していく様は、爽快としかいいようがない。

このてんやわんやの参勤交代がどうなるのか、下巻を見逃せない。




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