一号線を北上せよ 


 2014.5.8     金があっても貧乏旅行 【一号線を北上せよ】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

作者がベトナムを旅する。作者の「深夜特急」的な雰囲気はあるが、貧乏旅行といってもそこは大人の旅という雰囲気がある。ベトナムをバスで縦断する。ただ宿泊先はそれなりにまともなホテルを選んでいる。昔のように自由気ままにバックパックを抱えてシャワーのないホテルへ駆け込むなんてことはないようだ。

旅の中身も若干大人しくなっている。というか、普通の人と比べると十分特殊な旅であることは間違いないが、「深夜特急」に比べると、作者にしてはおとなしいような気がしてしまう。それでも、日本円にして数十円の違いであっても、ボラれていると気づけば店員と喧嘩してでも適正な価格で物を買う。この雰囲気は好きだ。

■ストーリー

旅に出たい―身を焦がし、胸を締めつける思い。ホーチミンからハノイまで、“私”は幹線道路をバスで走破するイメージに取り憑かれてしまった。飛行機の墜落事故で背中や腰を痛めた直後なのに、うちなる声が命じるのだ。「一号線を北上せよ!」テーマ別に再編集を加えた「夢見た旅」の記録、待望の文庫化。

■感想
旅に出たいと思い、ベトナム縦断を思いつくのはさすがだ。普通ならば、バスでベトナムを縦断しようなどとは思わない。約10ドルのバスの旅。お世辞にも道路事情が良いとは言えないベトナムで、何時間もバスに揺られ続けるなんて普通は耐えられるものではない。

作者の心の中には、快適な旅というのは選択肢にないのだろう。金を節約し、現地の人と同じものを食べ、あちこち見て周る。白人のバックパッカーたちの振る舞いに腹を立てながら一人旅を続ける作者の信念が表れているような作品だ。

旅行記となれば当然食べ物が登場してくる。本作でも様々な場所でベトナムならでわの食事を楽しむ。ただ、自分が東南アジア系の食事が苦手なので、食べたいとは思わない。基本的に貧乏旅行をするような人は、好き嫌いがあってはならないのだろう。

ある程度の太い神経と胃の強さというのが何より重要なような気がした。どんな食べ物だろうと、おいしそうに食べる作者にあこがれてしまう。唯一ホテルの朝食だけは、よくある洋食なのでうまそうに感じた。

正直、ベトナムがどうだとかの印象よりも、作者の金に対する節約ばかりが印象に残っている。食べ物やチケットの値段が日本円にしていくらと必ず語られている。そこで、ボラれたり、値切ろうとする金額は、日本円にすると数十円でしかない。

日本人の感覚からすると、それくらいどうでもよいのでは?と思うが、作者はそうではないらしい。作中ではっきりと明言されていないが、その国の価値に合せて旅をしているのだろう。自分であれば、つい金持ち風を吹かせ、どこか上から目線で、ボラれているとわかっていても、あげるような気持ちで金を払うかもしれない。

なんだかんだ言っても、一人旅にあこがれてしまう。



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