2014.9.3 歴史は勝者が作っていく 【覇王の番人 下】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
上巻でのイメージを引き継ぎ、本作でも光秀はすばらしい決断力と行動力を示す。光秀の男気あふれる行動に感化され、小平太も光秀のために命をかけて戦う。物語は織田信長支配が盤石となりつつあるところから始まる。着々とライバル武将を倒していく信長。そんな中で光秀が本能寺の変を起こすまでに、どのような葛藤があったのか、作者なりの解釈で描かれている。
本作がまったく荒唐無稽な物とは思えない。歴史は勝者が作っていく物なので、秀吉によりつくられた歴史では、光秀は卑怯者として描かれて当然だろう。本作では、信長を襲うと決断するまでの葛藤と、行動を起こしたあとの混乱がかなり興味深く描かれている。結果はわかっているが、手に汗握りながら読んでしまった。
■ストーリー
血みどろの戦を重ね、光秀は信長を「天下人」へ押し上げる。だが、冷酷非情な信長は無惨な虐殺をくりかえし、自らを神と称するようになる。悩んだ光秀は、ついに決断を下す…。亡き親の敵と信長をうらむ小平太は忍びとなって、光秀を助けるべく本能寺へと急ぐ!史上最大の謎が今ここに解き明かされる。
■感想
信長に重用された男が、なぜ信長を裏切ったのか。光秀が本能寺の変を起こすに至るまでの葛藤はすさまじい。偶然なのか、必然なのか、タイミングとしてこれ以上ない状況が光秀を後押しした。作中では、すべては秀吉が裏で動いていたと思わせる記述もある。
光秀が信長を討つと決意するまでの、あらゆることを想定した苦悩はすさまじい。千載一遇のチャンスを逃すのか。結果を知っていればこそ、思うこともあるが、光秀の決断は決して無謀なことではないと思わせる力がある。
光秀の忍びとして活動した小平太の物語もすさまじい。主君の夢を実現するため、毛利への同盟の密使となる。歴史的事実から、光秀と毛利の同盟はありえない。となると、小平太はどこかで妨害されなければならない。結果を知りつつ、物語を読むというのは、どのような過程で結果を迎えるかという、新しい読み方ができる。
信長を討つが、その後、同盟するはずの人物たちとうまくいかない。その絶望感たるやすさまじいものだが、それら光秀の苦悩が伝わってきた。今までの光秀の周りを思いやる気持ちを知っているだけに、なおさらその苦悩が心に突き刺さる。
光秀は「天下人」になれず、秀吉に倒されたというのが定説だが、本作では別の結論を描いている。歴史のIFとして、源義経がチンギスハーンになった類のものだ。このあたり、ちょっと蛇足のように感じてしまうが、実は死んだはずの光秀が、裏で徳川を助けていたというのは、なんだか夢がある。
本能寺の変を起こした理由など、真の理由は恐らく今後も判明しないだろう。それでも、想像力を働かせ、別のパターンを想像するというのが面白い。それを力のある作家が描けば、立派な歴史的事実が完成してしまう。
本作を読むと、明智光秀のイメージが変わることは間違いない。
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