覇王の番人 上 


 2014.8.29      光秀のイメージが変わる 【覇王の番人 上】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

覇王は織田信長のことであり、その番人たる明智光秀を主人公とした本作。信長を本能寺でだまし討ちした卑怯な武将というイメージがあるが、本作では正義感が強く、平和を願うすばらしい武将のように描かれている。一般的なイメージとは逆をいく展開に、多少驚くが、光秀の戦国を生き抜くための苦労と困惑は心に響いてくる。

本作では光秀に使える忍び目線でのパートもある。客観的に見た光秀と、光秀自身の心境が描かれるため、なおさら光秀のすばらしさが浮き彫りになる。戦国の時代を昇りつめた信長を、近くで支え続けた男。上巻では、天下を手に入れた信長の姿がメインに描かれている。信長に重用されたイメージだが、実は外様として苦労していたのが意外な部分だ。

■ストーリー

戦乱の世を我が手でしずめてみせる!その決意を胸に秘め、明智光秀は、一人の武将に目をとめる。その男とは―織田信長。やがて光秀は天下統一の夢を信長にたくし、織田軍団の先頭に立って戦いの日々へと突きすすんでいく。歴史に葬られた男・明智光秀の真実を掘り起こし、戦国の定説をくつがえす歴史巨編、堂々登場。

■感想
明智光秀にはあまり良いイメージはなかった。しかし、本作を読んだことで、その生き様のすばらしさに心打たれた。時代の寵児である信長と出会い、そして遣えることになる光秀。それまでも自分の国や、身内、はては将軍家との関係に板挟みにながりながら、信長に賭けた男。残虐なイメージのある信長はそのまま、ライバルである秀吉がどちらかと言えば、光秀の引き立て役的に描かれているのがポイントかもしれない。

戦国の世で、織田家では外様でありながら出世した男は、どのような苦悩があったのか。光秀のイメージが変わることは間違いない。

光秀に遣える忍者目線での物語が秀逸だ。戦国武将は誰もが忍者を使っていた。優れた身体能力と、厳しい訓練により身につけた技術で武将を助ける。物語として、信長に恨みをもったまま光秀に遣えるというのが伏線なのだろう。

恐らくは、のちの本能寺の変にて何かが起こることだろう。戦国時代は兵だけの戦いではなく、忍者たちによる情報戦でもあると描かれている。情報戦で負けることは、戦う前にかなりのハンデを背負うことになる。時代を深く考察した構成がすばらしい。

上巻では昇り調子の信長と、とんとん拍子に出世していく光秀が描かれている。そんな中でも、光秀が信長の残虐さに心痛める描写や、自分の子供たちを政略結婚へと駆り出さなければならない事態に苦悩する姿が描かれている。

ライバルである秀吉との関係や、信長との確執などが下巻に描かれるのだろうが、どのような展開になるのか非常に楽しみだ。本作の光秀は、決して信長を裏切るようなキャラではない。何かがあり、大きな決断をするのだろうが、どういった流れでそうなるのか気になるところだ。

誰もが知る戦国時代なので、読んでいてなじみがあり、すんなりと入り込めるのが良い。



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