フォグ・ハイダ 


 2014.8.3      一瞬で決着がつく 【フォグ・ハイダ】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

前作では、複数人と相対するゼンの戦いが描かれていた。本作では、ゼンよりも強い男たち二人が登場する。盗賊の仲間として登場したキクラと、キクラを追う側であるヒメジだ。ゼンと強者との戦いは、今までの物語と違い、一瞬で決着がつく。強者同士の戦いでは、最初の一振りですべてが決まるのだろう。剣士同士の緊迫した戦いは、作者の文体と相まって、すばらしい緊張感を生んでいる。

余計な説明がいっさいなく、ただ淡々と事態を描写しつづける。頭の中ではゼンの振るう剣がスローモーションのように思い浮かべることができる。一振りの剣で、様々な状況的変化が訪れ、そして、それに対処する者たち。ゼンたちの強さと、さらに上の存在を感じずにはいられない作品だ。

■ストーリー

「勝てない」――旅の途上、森の中でゼンを襲った山賊。その用心棒たる凄腕の侍には、やむにやまれぬ事情があった。変化する第四巻。

■感想
最初からゼンはそれなりい強い者と思っていた。それが、キクラが登場し、相対した時、ゼンが負けると悟ほどの強者の存在にワクワクし、さらにその上を行くヒメジの存在にドキドキした。物語はキクラを追う者たちと、ゼン、キクラ、チハヤの連合が戦う形となる。

チハヤもそれなりに強いという描写があり、並みの侍では束になってかかっても三人には勝てない。ゼンの朴念仁たる部分は、本作ではあまり見られない。戦いに明け暮れる本性がでてきたという感じだろうか。ひたすら強者を求める描写もある。

ゼンは強者と闘うことにより、自分自身の剣の力を格段に上げている。キクラとの最初の戦いでは負けると悟り、その後の稽古では、勝てるまで力をつける。最初の一撃ですべてが決まってしまう世界。キクラとヒメジの対決を目にし、その後、ヒメジと対決する。相手の剣よりも一瞬遅らせて間合いを詰めることで、相手に致命傷を与える。

理論的にはなんとなく理解できるのだが、作中の描写を読み続けると、自分が剣の達人になったような気分となる。冷たい文体であるために、感情もなにもなく、ただ剣だけが振り下ろされる。本作の雰囲気にぴったりだ。

侍として成長したゼンにとって、明らかに実力に差がある者に対しては、剣を振るう気にはならない。今まではそのような描写はなかったので、ゼンの力が格段に上がった証拠なのだろう。世間知らずのゼンの人間的成長は、今までの流れで感じることができた。

それが、剣士として明らかに成長したのは、本作が初めてだろう。明らかにゼンよりも力が上の者との対決がなかったいうのもあるが、強者同士の戦いを見ることと、自分が勝ち残った強者と闘うことで、さらにレベルが上がったのだろう。

これほどまでに強くなったゼンの旅が、今後どうなっていくのか。本作がひとつのターニングポイントなのだろう。



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