2014.12.4 驚きの四暗刻 【アヤツジ・ユキト2007-2013】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
作者のこの手のまとめは1987-1995を読んだことがある。初期の作者の状況がよくわかり、作家という職業の辛さが強く印象に残っていた。本作は、間が空くが2007~2013ということなので、自分がリアルタイムに読んでいた時期と重なるのがポイントかもしれない。時事的な話題や出版界の状況などリアルに感じることができる。が、なにより本作で印象的なのは、作者の知り合いたちが次々と亡くなり、それを悲しむという文章が多いことだ。
ある程度繰り返し書かれたというのもあるが、作者自身も50歳を超えているため、知り合いが亡くなるのはおかしいことではない。館シリーズを生み出す苦労や、Anotherシリーズが予想外にメディアミックスされブレイクしたことなど、作者の近況をリアルに感じることができる作品だ。
■ストーリー
「綾辻行人」をコンプリート!十角館の殺人新装改訂から深泥丘奇談、Another、奇面館の殺人、そしてAnotherエピソードS―2013年までの7年間に発表された小説以外を、詳細な自注と年々の回顧エッセイを付して全収録。待望のクロニクル、最新版。
■感想
作者の作品をほぼすべて読んでいる自分としては、作者がどのような考えで作品を生み出してきたかを知ることができるのは貴重なことだ。その時の作者の状況はどうだったのか。読者からすると、なかなか新作を発表しない作者は、普段何をしているのか、だとか…。
思いのほかいろいろな仕事をしていることに驚くだろう。賞レースの審査員に始まり、ゲームやドラマの原作などにも携わっていることに驚かされる。そして、一番驚いたのは麻雀関連のことだ。
作者の麻雀の腕がどの程度かはよくわからない。ただ、著名人たちの大会で優勝するとなると、相当な腕なのだろう。優勝した際の、奇跡的に作り上げた四暗刻の手順を読むと、鳥肌が立ってしまう。そこまで麻雀に詳しくない自分でも、そのすごさは伝わってきた。
非科学的なことを信じない作者ですら、麻雀のツキや流れを信じてしまう。本作は麻雀に特化したわけではないのだが、麻雀をしたくなってくるほどの熱量がある。作者の最近の趣味趣向が伝わってくるのも本作ならではだろう。
本作全般として、Anotherについての記述が多いことが目に付いた。館シリーズがメインの作者だが、メディアミックスで展開されたAnotherが今後の主力になるのだろうか。まさか、作者の作品がマンガ、アニメ、実写映画になるなんてのは、作者自身も想像していなかったというのがよくわかる。
続けざまに外伝が描かれ、その後、続編を書き始めたという記述まである。作者としては、古いファンがいる館シリーズも捨てがたいが、やはり話題性が大きいものに取り掛かりたいのだろう。
作者のファンならば読んでおくべき作品だ。
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