2011.11.22 巻き込まれる編集者も大変だ 【用もないのに】
評価:3
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■ヒトコト感想
「泳いで帰れ」がアテネオリンピック野球日本代表観戦紀ならば、本作は北京オリンピック野球日本代表だ。アテネに続いて、北京でも良い結果を出せなかった日本代表。作者は相変わらずの切れ味で辛らつな言葉を続けている。マスコミはあからさまに否定はしないが、作者は野球を愛しているだけに、怒りを直接的に表現している。また今回も、代表に対して「泳いで帰れ」と言っているところはさすがだ。それ以外には、初めてのロックフェスや、愛知万博、富士急ハイランドでジェットコースターなど、作者が何かしら目的を持って初めての経験が語られている。明らかに中年親父である作者が、編集者を連れて遊園地やロックフェスで若者に交じる姿は、想像するとたのしくなってくる。相変わらず切れ味鋭いエッセイだ。
■ストーリー
ニューヨーク、北京、そのへん。ものぐさ作家がお出かけすれば、なぜかいつも珍道中。
■感想
作者のエッセイは面白い。ただ旅となると、ある程度限定されるのか、旅の解説がメインとなっている。作者独自の視点の毒舌というのはあまりない。本作でも、野球日本代表については個人的な思いもあるのだろうが、インパクトのある言葉を続けている。あからさまに「面白さがない」「魅力がない」「サッカー日本代表に影響されている」など、関係者が読んだら激怒しそうなことを書いている。北京での観光や、中国事情はさておき、野球に対しての作者の考え方は一貫していて良い。この流れならば、WBC優勝についてどう書いているのか読んでみたくなる。
初めてのロックフェスやお遍路などは、作者が中年であるということを意識させる描き方をしている。それと共に、売れっ子作家というのはどんなわがままを言っても許されるのだなぁという気持ちもわいてきた。エッセイとして、フェスやお遍路さんの状況はよくわかるが、作者の毒がなりを潜めているので、ごく平凡なエッセイとなっている。フェスや旅する場所に興味がある人は、読んでいて楽しめるかもしれない。「延長戦に入りました」の強烈なインパクトのある面白さを知っているだけに、どうしてもそのレベルを期待してしまう。
他には富士急ハイランドで絶叫マシンに挑戦したり、愛知万博でマンモスを見たりと、初体験エッセイとなっている。中年おやじが絶叫マシンで絶叫するというのは予想通りだ。強烈なインパクトがあるわけではなく、ごく普通の感想といったところか。ただ、編集者を引き連れての大名行列や、企画として様々な場所へ行けるというのは羨ましいという思いが強くなる。付き合わされる編集者はたまったもんじゃないだろうが、それらも業務のうちなのだろう。作者はそれをわかっていながら、あえて罰ゲームのような体験をやらせようとしているようにも思えた。
野球関連のエッセイは、相変わらず棘がある。
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