延長戦に入りました  


 2011.1.21  極論だが面白すぎる 【延長戦に入りました】

                      評価:3.5
■ヒトコト感想
作者のエッセイを初めて読むが、かなり面白い。くだらない内容だが笑えてくる。そして、かなり極論というか一部の人を怒らせるような要素がある。それは最大公約数的に面白さを求めた結果、少数派を揶揄するようなスタンスなのだろう。本作がブログなどで発表されたとしたら、面白いという評価の中に不快に感じるという評価もあるかもしれない。しかし、エッセイとしてはこれで間違いないと思う。スポーツのことに少しでも興味があればさらに楽しめる。かなり昔のエッセイも収録されているので、時代を感じる描写もある。作者の子供時代を回想する場面では、思わず納得できたりもする。くそマジメなエッセイよりは数倍良い。

■ストーリー

ボブスレーの二番目の選手は何をしているのかと物議を醸し、ボクシングではリングサイドで熱くなる客を注視。さらに、がに股を余儀なくされる女子スケート選手の心の葛藤を慮る、デリケートかつ不条理なスポーツ無責任観戦!読んで・笑って・観戦して、三倍楽しい猛毒エッセイ三十四篇。

■感想
作者の目のつけ所がすばらしいのだろうか。読んだ瞬間疑問に思ったとしても、すぐに疑問を忘れてしまうような内容がエッセイとして描かれている。くだらない内容かもしれないが、中にはうならされるものもある。ボブスレーの二番目の選手が何をしているのかなど普通は考えない。ボブスレーという競技がマイナーなのは誰もが知っていることだが、その二番目の選手の役割を考え、マイナーな中でさらに役立たずのような印象操作をする。決して悪意があるわけではなく、そこには面白さしかない。実際にボブスレーの選手が読んだとしたら、怒り狂うかもしれないが、一般人の考えは作者とほぼ変わらないということを認識するだろう。

作者はスポーツがわりと得意らしい。小中学校時代はそれなりにヒーローだったらしいが、それすらもネタにしている。少年時代に足が速くヒーローになった人が晩年どうなっていくのか。すべてが正しいとは思わないが一理ある。文章のところどころにかなり辛らつな意見はあるが、そこには面白さを追求した何かがある。自分さえもネタにし、自分が納得できないことはとことんこき下ろす。このスタンスはすばらしい。女子が、がに股がどうだとかいうくだりも、本当にくだらないが妙に笑えてくるから不思議だ。

十年前のエッセイもあるため、なつかしのスポーツ選手やその当時の状況を思い出したりもする。特にオリンピックや野球の話で、国中が熱狂するような出来事であっても、興味がない国にとってはほとんど記憶に残らないという悲しい現実を認識させられた。野茂が大リーグで活躍してもそうだ。今でいうところのサッカーのだれそれがアーセナルというイングランドの名門に入団したとしても、地元民の間ではほとんど話題にならず、ひっそりと日本に戻ってくるだけなのだろう。

言葉のチョイスがすばらしく、思わず笑ってしまう。




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