私の家では何も起こらない  


 2012.3.12   連作ホラー短編集 【私の家では何も起こらない】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

連作ホラー短編集。1つの屋敷で巻き起こるホラーな出来事。頭の中に想像すると、あまりのグロテスクさに気持ち悪くなる作品や、ニヤリと笑える作品もある。ただ、どれもが文章を読み、それを想像すると恐怖で身震いしてしまうたぐいの話だ。連作なので、基本的に屋敷で起こった出来事には、かすかな繋がりがある。前回の惨劇の跡が、次の作品で登場するなんてことがよくある。逆に幽霊屋敷の逸話として語りつがれてきたことが、その後短編として登場したりと、パターンは様々だ。最後には作者と思われる人物が、その幽霊屋敷に引っ越すことになる。後半は、どことなくほのぼのとした童話のような雰囲気だが、前半の恐怖はかなりのものかもしれない。

■ストーリー

この家、あたししかいないのに、人がいっぱいいるような気がする・・・・・・ようこそ、丘の上の幽霊屋敷へ。恩田陸が描く、美しく不穏なゴーストストーリー。小さな丘の上に建つ二階建ての古い家。この家は、時がゆっくり流れている。幽霊屋敷と噂されるその家にすむ女流作家は居心地のよいこの家を愛している。

■感想
連作ホラーとしていくつかインパクトのある作品がある。前半は特にグロテスクな描写が多く、頭の中で想像するのをはばかられるほど強烈なインパクトがある。瞬間的にイメージしたのは、綾辻行人の「眼球忌憚」に近いかもしれない。ただ、本作はそこまでガチガチのホラーではなく、どこか遊び心がある。連作として面白さが倍増するように、続けて読むことによる面白さを付け加えている。ひとつの出来事の裏には何があったのか。幽霊屋敷にまつわる噂の原因は?特別驚くようなことではないが、連作としての面白さを感じることができる。

恐怖の幽霊屋敷といいながら、中には対応できる者も存在する。結末間近では、幽霊屋敷の修理に大工がやってくるのだが、このくだりがなんとなく昔話的な雰囲気に感じてしまう。そこに住み着く幽霊たちは、何も悪さをしようとしたわけではない。大工たちに諭され、ボロボロになった屋敷の修理を手伝う。幽霊たちが修繕を手伝う姿を思い浮かべると、今までの恐怖の気持ちが吹き飛んでしまう。恐怖だけで終わるのではなく、ちょっとしたユーモアも追加している作品だ。

ぞくりと肌寒くなるようなホラーもあれば、オチとして読者を驚かせるホラーもある。そして、最後には幽霊屋敷についての作者の思いが語られている。もしかしたら、ホテルなどでカンヅメとなって作品を描くことの多い作者だけに、なにかそれらしい現象に出会ったのかもしれない。この世界に今まで何人の人が死に、そのうちどの程度が幽霊として存在するのかなど、最終的にはこの世界に存在するすべての建物が、実は幽霊屋敷ではないのか、という極論にいたっている。

軽いホラーの連作短編集だ。




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