中原の虹3  


 2011.4.18  清王朝が滅びた真相 【中原の虹3】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

2巻では西太后の存在がかなり強く描かれていた。本作では清王朝の滅亡が描かれており、歴史的事実をもとに、作者独自の解釈で物語を面白くしている。いつまでたっても、西太后が国の行く末に強い影響力を及ぼしており、諸外国から清を守ろうとする。さまざまな勢力が清に成り代わろうとする中で、やはりインパクトが大きいのは張作霖のエピソードだ。極論ともいえる考え方と、周りを引きつけるカリスマ性。とんでもない残虐性をみせたかと思えば、国民を憂うやさしさをみせる。強欲な中に、自分の実力以上のことをやろうとする袁世凱や、まったくその姿がイメージできない孫文に比べると、やはり主役ということで特別な扱いを受けている。物語を読むだけで、知らず知らずのうちに中国の歴史に詳しくなってしまう。

■ストーリー

大いなる母・西太后を喪い、清王朝の混迷は極まる。国内の革命勢力の蜂起と諸外国の圧力に対処するため、一度は追放された袁世凱が北京に呼び戻される。一方、満洲を支配する張作霖は有能なブレーン・王永江を得て、名実ともに「東北王」となる。幼き皇帝溥儀に襲い掛かる革命の嵐の中、ついに清朝は滅亡する。

■感想
小難しい文章の中で、袁世凱や張作霖の活躍というのは胸躍る何かがある。2巻では、西太后の力がどこまでも付きまとうという印象があった。本作でも、死してなおその影響力が衰えることはない。肝心な部分では、かならず西太后が登場し、清の進むべき道を示している。袁世凱がどのようにして覇権を握っていくのか、内部的な出来事はすべて作者の創作なのだろう。しかし、このドラマチックな流れは、すべて西太后の考えが反映しているように思えてしまう。国を支配する器ではないといわれた袁世凱が、どうなっていくのか。歴史的事実どおりになるのは間違いないだろう。

袁世凱と対等に渡り合う人物として、間違いなく張作霖が台頭してくるのだろう。張作霖のエピソードは、かなり強烈な描き方をされている。自分に従わない者に対しては容赦ない制裁を加える。書面を送りイエスかノーかを求め、答えない場合はノーと考え、すべてを滅ぼす。これほどの残虐性を持ち合わせた人物だとは思わなかった。部下や家族に優しく、民衆のことを一番に考える良き支配者かと思いきや、ぶれない決断力を持った独裁者のように描かれている。そんな張作霖であっても、慕う文官が多数登場してくることで、カリスマ性が強調されているようだ。

清王朝が滅び、それらはすべて西太后の望みどおりだという流れ。袁世凱と張作霖に関するエピソードは詳細に描かれ、孫文はただの外圧のひとつとしてしか描かれていない。今後重要な役割を担うはずが、やはり本作では西太后の力を後々まで描きたいのだろう。若い蒋介石が登場し、先を連想させる登場人物たちがそろった。あとはどこまで描かれるのか。張作霖の死か、それとも袁世凱に成り代わり張作霖が力を示すところまでか。蒼穹の昴から続くシリーズには、最後まで西太后の影響力から逃れることができないのだろう。

シリーズの盛り上がりは最高潮に達している。




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