2011.8.29 期待したのは笑えるエッセイ 【つばさよつばさ】
評価:3
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■ヒトコト感想
作者のエッセイは面白い。それはわかっていた。本作は旅に特化したエッセイということで、面白エッセイもあれば、微妙なものもある。トータルするとレベルは高いのだろう。どちらかといえば、旅エッセイよりも、本人のことを描いたエッセイの方が面白い。小説家として作者はどんな生活をしているのか。自虐的な部分では、ハゲについてのエッセイや、顔バレについてのエッセイなど、作者の人となりを知ることができるエッセイは面白い。対して一般論に終始するものは微妙だ。どこぞの食べ物はうまいだとか、中国の歴史がどうだとか。作者のコアなファンならばついていけるが、どうしても期待してしまうのは、面白おかしいエッセイだ。
■ストーリー
JAL機内誌で人気連載中のエッセーがついに文庫化。『鉄道員』『蒼穹の昴』などベストセラー作家として知られる浅田次郎氏が遙か旅の空で遭遇した様々な出来事を流麗なタッチで書き綴った味わい深いエッセイ集
■感想
ベストセラー作家が旅先でエッセイを描く。さぞや旅に対して面白おかしいエッセイを書くのかと思いきや、旅のエッセイよりも作者自身や身の回りの出来事のエッセイの方が面白い。作者のその他のエッセイをすでに読んでいるので、レベルが高いことはわかっていた。きっちりとオチがあり、自分のウィークポイントを笑いにする。エッセイによって作者のイメージがよくなったのは間違いない。写真だけ見ると、気難しいハゲたおっさんのように見えるが、ユーモアのレベルが高く、誰かの悪口で笑いをとることをしないのがすばらしい。
本作では、年の1/3を旅しているという作者らしいエッセイとなっている。JALの機内誌で連載されていたそうなので、旅関係なのは当然だろう。売れっ子作家の旅というと、大名行列のイメージがあるが、作者は旅慣れしているらしい。ハードな執筆生活のなかでも、自分の楽しみを見つけ、旅をしているのはすばらしい。笑いありハプニングありの旅エッセイは面白いのは当然だろう。ただ、時おり登場するマジメな歴史的事実を語るエッセイというのは、なんだか硬すぎるように感じてしまう。それは、自分のレベルが低いだけなのだが、どうしても笑いの要素を期待してしまう。
旅エッセイとして現地の食べ物や観光地を語られても、それは当たり前のエッセイでしかない。作者独自の色は当然あるのだが、どうしても旅ということがメインとなっている。旅エッセイだから仕方ないのかもしれないが、その他の日常のエッセイがあまりに面白いために、そちらのテンションを期待してしまう。なんとなくだが、作者はあるテーマに縛られるとその魅力が半減してしまうのではないだろうか。自由気ままに描いたエッセイがとてつもなく面白いので、そのイメージが先行してしまった。
これほど旅をしている売れっ子作家は、めずらしい。
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