豆腐小僧 双六道中ふりだし  


 2011.7.7  妖怪リモコン隠し 【豆腐小僧 双六道中ふりだし】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

子供向けの豆腐小僧を読んだが、言いたいことはほとんど同じだ。ただ、本作は現代ではなく、時代的なものも背景として付け加えているので、より雰囲気がでている。妖怪というものが、どのようにして登場するのか。妖怪は人間が想像しない限り生まれない。幽霊についても、見る人の記憶によって変わってくるというのは新しい考え方かもしれない。妖怪が生まれたルーツや、存在する理由なども語られ。さらには、妖怪が狸によって絶滅させられかけているというのは面白い。確かにすべての妖怪が、狸が化けた存在だと言われたなら、妖怪=狸となり、人間は妖怪を想像しなくなる。豆腐小僧という何も知らない妖怪が狂言廻し役となり、妖怪の存在意義について楽しく語ってくれている。

■ストーリー

江戸郊外のとある廃屋に、いつのまにやら棲みついていた1匹の妖怪、豆腐小僧。豆腐を載せた盆を持ち、ただ立ちつくすだけの妖怪である自分は、豆腐を落としたとき、ただの小僧になるのか、はたまた消えてしまうのか―。思い悩んだ小僧は、自らの存在理由を求めて旅に出る!軽快な講談調で、小僧が出会う鳴屋や死に神、鬼火との会話の中から現れてくる妖怪論。妖怪とは、いったい何なのか?妖怪入門としても必読の痛快作。

■感想
今まで妖怪について、それほど深くは考えたことがなかった。なぜ妖怪が存在するのか?そんなことを考え出すと、きりがないのだが、本作を読むことでその答えがはっきりとわかってくる。妖怪は、人間が何か不安に思ったり、良く分からない現象に出くわしたとき、理由をつけるために存在するらしい。そう考えると、いかにもその現象をそのまま頭につけた、なんとかババアや、家がピシピシと鳴る場合に登場することになっているヤナリという妖怪など、わかりやすいものばかりだ。

すべての妖怪が、人間が考え出し創作したものということになる。そこに、狸という存在がわりこむことで、すべては妖怪ではなく狸が化けたという話になる。そうなると、妖怪の存在は狸ということになり、狸が妖怪にとってかわることになる。この考え方は面白い。人間がわけのわからないものに対して創作した妖怪が、実は狸でしたということになれば、過去にさかのぼり、すべての妖怪が狸ということになってしまう。作中では狸の陰謀を阻止せんと豆腐小僧たちが奮闘するのだが、考え方としてはすごく面白いと思った。

妖怪についての入門編としては、ジュブナイル版の豆腐小僧よりも子供っぽくなく、かといって難しくもない。大人が読む入門編としてこれほどぴったりとくるものはないだろう。豆腐小僧という何も知らない存在が、右往左往し、正直な疑問を口にする。それは、読者が感じていることの代弁であり、本作のハードルを下げている。科学がまだ未発達だった時代だからこそ生まれた妖怪文化で、現代になって新しい妖怪が生まれない理由もわかる。夢がないようだが、あまりに世界の仕組みがわかりすぎると、妖怪は生まれないものなのかもしれない。

現代風にアレンジするならば、”リモコン隠し”という妖怪は、存在してもいいはずだ。




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