ソロモンの偽証 第Ⅲ部 法廷  


 2013.8.22     中学生の裁判の違和感 【ソロモンの偽証 第Ⅲ部 法廷】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

第二部までは裁判の準備段階。本作ではとうとう裁判が始まるのだが、最初から違和感ばかり印象に残っている。まず、中学生がここまで理路整然と裁判を進めることができるだろうか?疑似裁判と言いながらも、誰もがイメージする本格的裁判となんらかわりがない。大人相手に、不規則発言をする者には退出を促す。大人としても中学生にここまでされると反抗しないわけがない。

何もかもが綺麗すぎる裁判のように感じて仕方がなかった。裁判のことは置いておくとしても、物語の結末には少し消化不良だ。新事実が登場したのは良いのだが、その結果、三宅樹里の扱いがどうなったのか。すべてにおいて、この三宅樹里の発言がストレスの原因のような気がした。

■ストーリー

事件の封印が次々と解かれていく。私たちは真実に一歩ずつ近づいているはずだ。けれど、何かがおかしい。とんでもないところへ誘き寄せられているのではないか。もしかしたら、この裁判は最初から全て、仕組まれていた―?一方、陪審員たちの間では、ある人物への不信感が募っていた。そして、最終日。最後の証人を召喚した時、私たちの法廷の、骨組みそのものが瓦解した。

■感想
裁判がスタートし、それぞれの証人が発言する。発言内容については、特別新しいことはない。ただ、一部の発言で、自殺ではなかったのか?と一瞬思ったが、それは一瞬の盛り上げでしかない。裁判がすすむにつれて、結末はやはり自殺の結論へと傾いていく。

最初から思っていた通りの流れだ。ただ、二部で三宅樹里が話せるようになったので、何かしら大きな出来事が起きるのではないかと期待した。そして、期待通り三宅樹里がはっきりと告発の内容が正しいと発言した。これは結末までに、何かしらの断罪があるかと思った瞬間だ。

嘘で塗り固められた発言をした者には、それなりの報いがあるはずだ。が、本作では、そのあたり変な同情を誘うことで、なかったことにしている。被告がどれだけ極悪非道な人物かをツラツラと説明することにより、告発されてもしょうがないという流れにする。または、自殺を誘発したであろう人物をかばうために発言したなど。

なんだか、はっきりと嘘を口にしているにも関わらず、そのことに関してなんら説明がなく、うやむやにされると、ものすごいストレスがたまる。特に、それがヒステリックに叫ぶキャラクターならばなおさらだ。

結局は裁判の終わりと共に、結論がでる。おおよそ最初に想像した通りの流れだ。新たな関係者にしても想定の範囲内だ。二部までの流れからすると、三宅樹里の発言が嘘か本当かにすべてがかかっていると思ったが、それもどうでもよいような流れにされている。

結局は、学内裁判で物語を完結させ、自殺に至るまでの被害者の心理を想像するという流れだ。お遊びであるはずの学内裁判が、いつの間にかかなり本格的に効力のあるものとなっている。中学生というのを忘れそうなほど、本格的すぎて、嘘くささをとおりこしている。

中学生の裁判というのが、読んでいる間中、頭から離れることはなかった。




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