龍臥亭幻想 下  


 2013.11.28    吉敷と御手洗の共演? 【龍臥亭幻想 下】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

上巻では、巫女の消失と森孝魔王の伝説の真偽が気になり、さらには吉敷と御手洗がどのように事件にかかわるかが楽しみな部分でもあった。トリックについては期待どおりだ。幻想的な出来事として煙に巻くのではなく、現実的な答えを導き出している。ただ、御手洗と吉敷のからみは微妙だ。吉敷は現場に登場したが、御手洗は相変わらず電話での対応となる。

御手洗の強烈なキャラと吉敷の冷静沈着なキャラがどのように融合するのか楽しみだっただけに、少しだけ残念だ。龍臥亭といえば、異様な恐怖感がある。今回も旧日本軍の研究がそのまま現代の森孝魔王の伝説としてよみがえり、伝説の恐ろしさが読者を恐怖へ導く。この恐怖の雰囲気は、龍臥亭でしか出せないのだろう。

■ストーリー

「この頭部、足部を森孝の具足中に葬れ」―血溜まりに浮かぶ生首と切断された片足。発見された第三の死体が、龍臥亭を恐怖の底に叩き落とした。そして、旧日本軍の研究所で行われていた肉体縫合の悪魔的な実験!百年の時空を超えて甦った伝説の魔王は、何処に向かうのか?ファン待望!御手洗潔と吉敷竹史の推理が、いま初めてクロスする。

■感想
巫女の消失トリックは、思いのほか現実的だ。分厚いコンクリートの中に巫女の死体が隠されたトリックとは何なのか。その答えは、それほど大掛かりな仕掛けではないが、見逃していた部分だ。地震により偶然地割れが発生し、埋まっていた死体が発見される。その偶然について御手洗が指摘するのだが、確かに都合がよすぎる。

小説的なご都合主義ではなく、偶然は偶然ではなく必然だという流れ。このあたりさすがとしか言いようがない。御手洗の推理に追従するように、吉敷もトリックを看破する。途中の思考が説明されないだけに、二人の能力のすごさばかりが印象に残る。

森孝魔王の伝説は恐ろしい。旧日本軍の研究で、生きた人に死体の手足を縫合し兵士として使おうとする。森孝魔王は様々な死体から作られた恐怖の象徴だという流れ。現実的ではないが、龍臥亭の雰囲気がそれを納得させる説得力がある。肉体縫合の研究の悪魔的な恐ろしさと森孝魔王には、共通した恐ろしさがある。

ありえないはずが、物語上ではさも当然のごとく語られると、頭の中でそれらの描写を想像してしまう。「龍臥亭事件」ほど石岡は活躍しない。この恐怖の現象をそのまま受け入れるのは石岡らしい。御手洗であればかなり早い段階でトリックに気づき、これほど恐怖を感じなかったことだろう。

ラストには事件の全容を解明する手紙が登場する。衝撃的な内容だが、石岡が見抜けなかったトリックがすべて描かれている。吉敷と御手洗の競演であっても、適切な情報と、解くべきトリックとして認識されない場合は、そのままスルーされるようだ。

森孝魔王の恐怖の伝説にも、現実的な解がある。過去にさかのぼり、伝説についての謎解きまでしてしまうのが本作のすごい部分だ。伝説は伝説として終わらせるのではなく、伝説の理由も解明し、事件のトリックまでも解明する。

おいしいところは、結局、吉敷と御手洗にもっていかれた感じだ。




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