龍臥亭幻想 上  


 2013.11.18    龍臥亭ふたたび 【龍臥亭幻想 上】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

龍臥亭事件から八年後。過去の恐ろしい伝説や、巫女が消失する事件など、石岡ひとりでは到底手におえないような出来事が待っている。里美が成長し弁護士資格を得て、石岡は御手洗なしで独り立ちできるようになりかけている。そして、加納通子の存在が意味ありげだ。通子がいるということは、吉敷が登場する可能性があるということだ。

突然、消え去った巫女が、コンクリートの地面から出てくるなど、普通では考えられない事件を石岡と里美が解決できるのだろうか。おあつらえ向きに、龍臥亭周辺は大雪に見舞われ、身動きがとれなくなる。定番としては、今後第二、第三の事件が発生するのだが…。龍臥亭というだけで、恐ろしさの代名詞のように感じるのは、気にしすぎだろうか。

■ストーリー

石岡和己、犬坊里美、そして加納通子――。雪に閉ざされた龍臥邸に、八年前のあの事件の関係者が、再び集まった。雪中から発見された行き倒れの死体と、衆人環視の神社から、神隠しのように消えた巫子の謎! 貝繁村に伝わる「森孝魔王」の伝説との不思議な符合は、何を意味するのか!幻想の龍臥亭事件が、いま、その幕を開ける!

■感想
龍臥亭周辺で巻き起こる事件。過去の事件にまつわる出来事のパターンは、「龍臥亭事件」と同様だ。今回は、「森孝魔王」という恐ろしい伝説がポイントとなっている。鎧武者が両腕を切り落としに来るなど、想像するだけでも恐ろしい。巫女が突然消失したトリックもまったく想像がつかない。

出入りできないはずの場所から突然消えた巫女。3か月後にコンクリートの地面が地割れしたことで、そこに死体があることがわかる。常識的に考えれば、ありえないことだ。が、なんらかのトリックがあるのだろう。どのように解明されるのか、ワクワクは止まらない。

石岡や里美と共に、加納通子の存在がポイントだ。前作でも登場していたが、過去の吉敷シリーズと整合がとれている程度の印象だった。それが、本作となると、まったく新しい状態なので、もしかしたら吉敷が登場するのでは?という期待はある。

さらには、到底石岡ひとりでは解決できる問題ではないので、もしかしたら御手洗が登場し、吉敷と御手洗の夢の競演が…。なんて期待をしてしまう。過去の伝説や言い伝えに隠された謎を解くのは御手洗の得意なところだ。吉敷が現実路線でどのような答えをだすのか、競演するのであれば楽しみで仕方がない。

大雪に包まれた龍臥亭。外部との行き来もままならないとなれば、新たな事件の発生を予想せずにはいられない。龍臥亭事件よりも、個性豊かなキャラクターたちなので、誰が次の犠牲者かは想像できない。ただ、伝説や言い伝えをベースとした事件ならば、ひどく現実的なトリックも、期待を裏切るという意味ではありなのかもしれない。

石岡が相変わらずの不安定な心理状態のまま、里美と微妙な関係のまま、成り行きに流されていくのだろう。御手洗が引っ掻き回すというのも読んでみたい気がする。

下巻でどのように現実的な答えが示されるのか、楽しみで仕方がない。




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