深泥丘奇談・続  


 2013.2.21     ホラー映画ファン必読 【深泥丘奇談・続】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

前作と同様に奇妙な恐ろしさがある。頭の中に想像する恐怖というのは、個人の心にある恐怖なので、ずばり恐ろしさが心に響いてくる。作者の分身とおぼしき小説家が妄想なのか現実なのか、奇妙な出来事を経験する。収録された雑誌の影響なのかもしれないが、ホラー映画にまつわる物語に妙な親しみやすさを感じてしまった。突然眩暈を感じ、夢か幻か、主人公の「私」に死の危険が迫る物語までもがある。深泥丘病院で私と親しくする医者や看護婦も、奇妙な出来事の案内人のような雰囲気すらある。すでにパターン化され、「世にも奇妙な物語」的な単発としての面白さがある。例え主人公がどのような経験をしたとしても、次の短編では当たり前のように、新たな奇妙な物語がスタートする。

■ストーリー

作者の分身とおぼしき小説家の日常の風景がぐにゃりと歪みはじめる前作に引き続き、作中世界の変容に拍車がかかる。主人公の住む「深泥丘(みどろがおか)」の全貌は明かされるのか? 目眩(めまい)? 揺れているのは自分なのか世界なのか。人間の存在が根底から揺さぶられる、哲学的な問と奇妙な味わいをたたえた挑発的連作集。

■感想
「コネコメガニ」は、恐怖というよりも、なんだかエビ、蟹などの甲殻類が食べられなくなるような作品だ。過去に、甲殻類の奇妙な死にざまを見たせいで、甲殻類が嫌いになる。そんな私が家族と外食へ行くのだが…。エビや蟹は大好物だ。が、本作を読むと下手したら、エビ、蟹を食べたくなくなる可能性がある。バリバリと生きたままの甲殻類を口の中で噛み砕くなんてのは、気持ち悪くて吐き気をもよおす。甲殻類特有の味噌が口の中に広がる感覚が、かなり気持ち悪さに拍車をかけている。

「ホはホラー映画のホ」は、昔のホラー映画ファンならば、それなりに楽しめるだろう。有名ホラー映画に見立てた殺人事件が起こる。最後には、13日の金曜日をモチーフとしたジェイソンの仮面を被った死体が存在したのだが…。昔の、名作と言われたホラ-映画を知らない人は、あまり意味がないだろう。ホラー映画をパロディとした作品であれば、その元ネタを知らなければまったく話にならない。最後に登場する13日の金曜日の話にしても、意味をわかっていないと楽しめない。ホラー映画を知らない人は楽しめないだろう。

「ソウ」は、またしても映画関連になるが、本作の中で最も印象深い作品だ。映画の[SAW」の殺人鬼・ジグソウをマネたような事件が起こる。命を大切にしない者たちに、ジグソウの魔の手が迫る…。「SAW」シリーズが好きな自分としては、なんだかうれしくなってきた。そして、オチも秀逸だ。完全にSAWをイメージしていたが、作中では「ソウ」と描かれていることの謎が最後に判明する。ダイイングメッセージや残酷な死体というのをうまくつかっている。まさか誰もが安易に想像するパターンのオチをもってくるとは思わなかった。

前作ほど奇妙な恐ろしさはないが、ホラー映画好きの琴線には響くことだろう。




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