完全犯罪に猫は何匹必要か?  


 2013.6.16      猫好き向きなミステリー 【完全犯罪に猫は何匹必要か?】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

鵜飼探偵シリーズ。物語の舞台が回転すしチェーンの経営者絡みの事件ということで、チェーン店のマスコットの招き猫がポイントとなる。殺人事件のかたわらに招き猫があるということで、ユーモアの要素が強い。10年前の事件と現在の事件のつながりや、猫がポイントとなるなど、ミステリーのトリックよりもお笑いの印象が強い

このシリーズの特徴は「密室の鍵貸します」で、刑事がかなり事件解決に役立つという印象があったが、それが前作「密室に向かって撃て」で一気に崩れた。それが、本作ではまたまた砂川警部が大活躍する。お決まり通りの探偵と刑事の関係ではなく、刑事がかなり冴えた推理を展開する。探偵は鋭い推理を披露するが、お笑いの役割もかなりある。ミステリーのトリックについてはほとんど印象にない。

■ストーリー

回転寿司チェーンを経営する資産家・豪徳寺豊蔵が殺された。犯行現場は自宅のビニールハウス。そこでは、十年前にも迷宮入りの殺人事件が起こっていた…。豊蔵に飼い猫の捜索を依頼されていた探偵・鵜飼杜夫と、過去の事件の捜査にも関わっていた砂川刑事がそれぞれの調査と推理で辿り着いた真相とは!? 10年の時を経て繰り返される消失と出現の謎!! すべての猫は、殺人のための装置だったのか?

■感想
シリーズのキャラクターとして、鵜飼は貧乏で、砂川警部はダメ警部というイメージがついていた。が、本作では砂川警部は過去の事件の失態はさておき、今回の事件では大活躍する。猫についてなんだかんだとうんちくがあり、特に招き猫についてはその歴史についても細かく描かれている。

特別招き猫について興味はないが、猫がポイントなので、必然的に猫関係の話が続くことになる。なんだかこの流れというのは、人間たちだけがガチャガチャと大騒ぎし、猫は悠然と自由気ままに動き回っているように思えてならない。猫の動きに翻弄される人間というのがお笑い要素のひとつだ。

ミステリーのトリックとしては、特別な印象はない。猫がポイントなのは間違いないが、トリックとしてそれほど斬新なわけではない。いつものキャラクターたちが、真面目に探偵としての仕事をしているのだが、裏目にでて面白行動になる。

特に葬儀の場面では、真面目な雰囲気のはずが、キャラクターたちの行動がいちいち面白い。第二の殺人事件では、味噌汁がぶっかけられている。なんだかここまでめちゃくちゃなことに理由などあるのか?と思えてくるが、最後にしっかりと理論的な答えが用意されているのには驚いた。

三毛猫はほとんどがメスでオスは希少価値があるだとか、招き猫の起源だとか、猫関係のうんちくが豊富だ。タイトルにあるように、完全犯罪に必要な猫の数という問いかけはないのだが、事件のトリックを考えると、ある意味猫は何匹も必要かもしれない。

腹を抱えて笑うというのではないが、ニヤリとできる笑いが多い。シリアスなミステリーではないので、通勤通学の電車の中で、サラリと読むのに適しているだろう。当然、本格ミステリー好きの人は不満でしかないが、このライト感に需要があるのだろう。

猫好きならば、ぜひとも読んでおきたい作品だ。




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