密室に向かって撃て!  


 2013.5.31     拳銃の弾の数当てミステリー 【密室に向かって撃て!】

                      評価:3
■ヒトコト感想
前作では、名探偵役である鵜飼がそこまで名探偵っぷりをはっきせず、代わりに刑事が推理を展開するという、一風変わったミステリー小説だと思った。それが、本作ではごくまっとうなミステリー小説へと変わっていた。鵜飼だけがすべての謎を解き明かし、最後に自分の推理を展開する。お決まり通り、刑事たちは鵜飼の引き立て役として、間違った推理を披露する。

拳銃の弾丸の数がポイントとなる本作ではあるが、ミステリー的にそこまで不可解な事件という印象はない。登場キャラクターたちが、ユーモアたっぷりな行動と会話をくり広げるので、それが出来事の深刻度をほぼ0にしている。前作で個性的なキャラとして確立されたホームレスが、いきなり殺害されるなどの意外性はある。

■ストーリー

烏賊川市警の失態で持ち逃げされた拳銃が、次々と事件を引き起こす。ホームレス射殺事件、そして名門・十乗寺家の屋敷では、娘・さくらの花婿候補の一人が銃弾に倒れたのだ。花婿候補三人の調査を行っていた“名探偵”鵜飼は、弟子の流平とともに、密室殺人の謎に挑む。ふんだんのギャグに織り込まれた周到な伏線。

■感想
流平と鵜飼が殺人現場にいあわせるのはいつものとおり。そして、刑事コンビがヘンテコな行動をするのもパターン化されている。ライトなミステリー小説としては、いいかげんな刑事にいいかげんな探偵というのは、ある意味定番かもしれない。

前作で大活躍した砂川警部は、今回は冴えた推理をしない。推理らしきことをするが、それは読者をミスリードするためのものでしかない。王道ミステリーの定番だが、名探偵を引き立てるためだけに存在する刑事だ。ただ本作の刑事コンビはお笑いの要素も担っている。

事件のミステリー度はそこまで高くない。拳銃の弾丸の数と、実際に撃たれた弾丸の数が合わないことがポイントなのだが、それさえ解ければすべてが解決するわけではない。動機や密室の解明など解くべきことはいろいろあるのだが、それらすべてを鵜飼があっさりと解決している。

発生した事件の不可能性が高ければ高いほど、読者は、どうやって?という疑問を強くもつ。それをあざやかに解決してくれる探偵の言葉を心待ちにする。本作ではその「どうやって?」と思う気持ちがあまり高まらなかった。

お笑いミステリーとして、いくつか笑いのポイントがある。事件の動機を紐解くと、それなりに深刻なのだが、本作ではサラリと流されている。ユーモアの部分と深刻な部分のバランスを間違えると、とんでもない物語になるところだが、本作はうまい具合にバランスをとっている。

キャラクターがすでに確立されているので、物語としてユーモアに重点を置くのはやりやすいのだろう。前作に登場したキャラを、本作の主要キャラとしたことで、さらなるシリーズの広がりを予見させるような流れになっている。

キャラクターの個性が活きるシリーズになるのだろう。




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