ジェネラル・ルージュの凱旋


 2012.12.17    やはり速水はカッコイイ 【ジェネラル・ルージュの凱旋】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
原作で感じていた速水の魅力が存分にあふれている作品だ。堺雅人演じる速水は、凍りつくような冷たさがあり、能力が高く、他を圧倒する決断力と、独断専行の雰囲気がある。この速水のキャラクターで、救命救急医療の問題点をわかりやすく描いている。病院の経営と、人の命を救うことを天秤にかけ、どちらを優先するのか。作中の速水は、ひたすら救急医療の依頼を受け続ける。疲弊するスタッフたちと、家に何ヶ月も帰っていないという速水の描写がまたストイックさを際立たせている。緊迫した救急医療の世界の中で、何を重要視するのか。ミステリー的に、医療メーカーとの癒着の話があるのだが、それはオマケでしかない。救急医療の現場の厳しさを、これでもかとアピールする作品だ。

■ストーリー

「チーム・バチスタ事件」を解決に導いた (と思われている)窓際医師、田口公子 (竹内結子) は、院内における諸問題を扱う倫理委員会の委員長に任命された。そんな彼女の元に、一通の告発文書が届く。その内容は『救命救急の速水晃一センター長 (堺 雅人) は医療メーカーと癒着している。看護師長は共犯だ』という衝撃的なものだった。時を同じくして、告発された医療メーカーの支店長が院内で自殺する、という事件が起こる。またもや高階院長 (國村 隼) から病院内を密かに探るように命を受ける田口。そこに骨折をした厚生労働省の切れ者役人・白鳥圭輔(阿部 寛)が運び込まれ、二人は嬉しくもない再会を果たす。実は白鳥の元にも同様の告発文書が届いていた…

■感想
前作のチームバチスタと同様に、原作と結末は違っている。ただ、そこは広く一般受けするように、わかりやすくなっているので、原作のファンでも納得できるだろう。速水役を堺雅人が演じるのだが、これがまさにはまり役で、速水の魅力を十分に表現できている。ニヤケた表情でありながら、緊迫した場面では、周りを緊張させる一言を叫ぶ。速水の魅力が本作をすばらしいものにしている。救命救急のセンター長であり、経営を考え人を削減しつつ、数多くの人を助けようとする。相反する二つのことに苦しむ中間管理職的な悩みのようだが、速水はひとつの方向にしか力をいれない。この圧倒的な独断専行がすばらしい。

狂言回し役である田口は、ただ物語を追いかける人でしかない。観衆と同じように、出来事をただ傍観しているだけだ。告発文が田口に届いたことで、事件に関わるのだが、白鳥と同様に速水のキャラクターにすべてを食われているといった感じだ。このシリーズは病院内の権力闘争や、主導権の握り合い、そして、出る杭を打つというのが当たり前の恐ろしい世界だ。客観的に思うのは、速水のようにすぐれた能力があったとしても、組織の中で目立つと、それだけで目の敵にされるということだ。個人の能力が、直接人の命を救うことになる医者という仕事であっても同様なのが恐ろしい。

原作者が医者ということで、現場の問題点を如実に描いているのだろう。産婦人科や小児科が金食い虫で、病院としてほとんど儲けがない実状。心療内科では、患者に薬をジャブジャブとだすことで、薬漬けにし、儲けようとする。世間の病院がすべてこんなことを考えているとは思いたくないが、一部は正しいのだろう。映画としては、速水をヒーロー扱いにし、病院の問題点を声高に叫ばせ、速水が責任をとるという形にしている。この方式は確かに速水の格好良さが目立つ。が、物語中で、問題が解決されることはない。うやむやのまま、根本原因は残されたままだ。

医療の問題点を上げ、それを解決するのが目的ではないので、後味のすっきり感だけを突き詰めたのだろう。



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