2011.11.7 他のシリーズとの差別化が難しい 【冬のオペラ】
評価:3
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■ヒトコト感想
作者の女子大生シリーズに似ている。謎解き役である噺家の円紫が、バイトで生活する自称名探偵の巫に変わっただけにすぎない。キャラも良く似ており、雰囲気もそっくりだ。ただ女子大生シリーズが、より日常に近いとしたら、本作は非日常感が強いのかもしれない。あゆみから話を聞いただけで、すべての謎を解き明かすのはすでに定番だ。なぜ?という疑問を巫があっさりと解くのだが、どうしても円紫とキャラがかぶってしまう。落語関係の話がでてこないので、ハードルは若干さがるが、表題作である「冬のオペラ」はフランス文学について深い知識が必要だ。小難しい話をツラツラとされ、それがきっかけで犯人がわかりましたと言われても、ポカーンと口をあけるしかない。
■ストーリー
勤め先の二階にある「名探偵・巫弓彦」の事務所。わたし、姫宮あゆみが見かける巫は、ビア・ガーデンのボーイをしながら、コンビニエンス・ストアで働き、新聞配達をしていた。名探偵といえども、事件がないときには働かなければ、食べていけないらしい。そんな彼の記録者に志願したわたしだったが…。真実が見えてしまう名探偵・巫弓彦と記録者であるわたしが出逢う哀しい三つの事件。
■感想
連作短編集。自称名探偵ながら、日々の生活をバイトでやりくりしている巫という男が事件の解決役だ。主人公である不動産事務のあゆみが、周りで起こる名探偵にふさわしい謎を巫にもっていくことで、事件解決へと動き出す。基本的にオーソドックスなミステリーで、表題作である「冬のオペラ」は密室チックな殺人事件が起こる。そこで巫はあゆみの話を聞いただけですべてを解き明かす。確かに犯人と、その動機については思いもよらないことだが、情報として隠されていたというだけで、タネがわかるとなんてことはないと感じてしまう。
その他にも「三角の水」という大学を舞台にした巫初登場の短編がある。少し化学的な知識が必要となるが、わりとオーソドックスだ。巫やあゆみのキャラクター紹介という意味合いの方が強いのかもしれないが、キャラ的な魅力はまだ見えてこない。三編の作品を通して、巫のキャラクターが特殊だとか、あゆみに何か特徴があるわけではない。巫に対しての恋のロマンス的な何かがあるのかと思いきや、そうもならない。結局はキャラクターが女子大生シリーズとかぶるので、その後シリーズ化されなかったのだろうか。
「蘭と韋駄天」はその後の「冬のオペラ」に繋がる作品だ。人がテレポーテーションするという、ちょっと興味をそそられる謎ではあるが、この手の作品の宿命だろうが、タネがわかると、なーんだという感想しかない。人が一瞬にして移動するというその謎の表現方法はすばらしい。事件についても蘭を盗んだ盗んでいないという、それほど陰惨なものではないのも作者の特徴だろう。フランス文学や、それ以外にも最低限ある程度の知識がなければ楽しめる作品ではない。それでも、ミステリーとしてのわかりやすい面白さはある。
女子大生シリーズとの差別化は難しいのだろう。
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