2012.10.29 気づいたら仲間が死んでいる 【栄光なき凱旋 下】
評価:3
真保裕一おすすめランキング
■ヒトコト感想
上巻では、日系人として戦争にどのようなスタンスでのぞむべきかが描かれていた。3人の日系人がそれぞれの考えをもち行動する。本作では、戦争に志願した3人が、ある者は激しい戦地へと送られ、ある者は語学のエキスパートとして日本人の捕虜に対応することになる。ジロー、ヘンリー、マット。それぞれが強烈な戦争体験をするのだが、中でもダントツなのがヘンリーだ。正直、日系人だとかいう部分よりも、戦争の残酷さをリアルに感じてしまった。どれだけボロボロになろうとも、仲間と共にひたすら進むしかない現状。仲間との共闘意識からか、負傷し戦地から離脱したとしても、すぐに戻ろうとする。戦争の悲惨さばかりを強調したような物語だ。
■ストーリー
終戦の時は近づいていた。アメリカ軍は日本軍を罠にかける秘密の作戦を立案する。その命令を受けたマットは太平洋の小島でジローと出会い、彼の過去の秘密を知る。収容所から日系部隊へ進んだヘンリーは、仲間とともにイタリア戦線へ投入され、過酷な戦場に身をさらしていく。やがて彼らが再会する時、運命は三人に残酷なまでの試練を与える。愛、友情、生と死。魂を揺さぶる感動のエンターテインメント巨編。
■感想
日本軍を罠にかける作戦へ参加するマットとジロー。比較的安全と思われた捕虜尋問の仕事から突然戦地へ向かう二人の作戦は、まさに日系人だからこそ成り立つ作戦だ。ジャングルで現地ゲリラと共に日本軍を罠にはめようとする二人。日本への激しい恨みというのをジローから感じ、過酷な作戦を成功させることにどれほど意味があるかを問われているようにも思えた。戦争において、兵士はただの駒でしかないと思わせる場面ではあるが、この後、ヘンリーのエピソードの部分では、さらにその気持ちが強くなった。
ヘンリーのパートは衝撃的だ。日系人というのを抜きにしても、衝撃的すぎる。戦争とはどういったものなのか。大局的にみれば、国と国との戦いだが、実際には人間同士の殺し合いだということを再認識させられた。どんなにボロボロになろうと、どれだけ仲間が死のうと、兵士は前に進むしかない。ありきたりなお涙頂戴要素として仲間が死ぬわけではない。本来の戦争とは、気付いたら仲間が死んでいるということばかりなのだろう。今まで、戦争を描いた作品をいくつか読んだことがあるが、本作ほど、いち兵士の悲惨さを描いたものは今まで読んだことがない。
戦争が終わると3人は再会することになる。残酷なまでの結末だが、因果応報ということで、しかたのない結末なのだろう。日系人というフィルターがなかったとしても、ジローの罪は許されるものではない。また、国という巨大組織にとっては、いち兵士など米粒ほど気になるものではないのだと思い知らされる。タイトルどおり、アメリカは戦争には勝っても、そこで兵士として戦った日系人たちにとっては、栄光などなにもないのだろう。強烈なインパクトは、戦闘描写であることは間違いないが、日系人の境遇というのも、悲しみしか印象に残らない。
戦闘時のハイなテンションと、仲間との共闘意識というのは、わかる気がした。
おしらせ
感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp