ディスコ探偵水曜日 下 舞城王太郎


2012.2.4  ミステリーをぶっ壊せ 【ディスコ探偵水曜日 下】

                     
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■ヒトコト感想

上巻はそこそこ、それなりに整合性がとれており、ぶっ飛んだ謎ではあるが、ミステリー的興味を惹かれる部分があった。中巻はそこから一気に探偵たちの推理合戦になったかと思うと、後半では意識が現実を変えるという、とんでもないストーリーになる。空間を捻じ曲げたりなんだりと、その流れのまま下巻に突入し、下巻ではさらに加速することになる。空間だけでなく時間までも超えてしまうディスコ。もはやなんでもありで、たとえ刺されたとしても、過去に状態を戻せば死ぬことはない。すべて、意識すればなんでもできてしまう。こうなってくると、ミステリーの意味はない。なにせ、空間や時間を自由に行き来できるのだから、密室やトリックなど意味がない。

■ストーリー

弱いことって罪なの?悲痛な言葉が孤児院に木霊する。ムチ打ち男爵と泣き叫ぶ子供たち、神々の黄昏、ラミア症候群。「踊り出せよディスコテック。急いでな」。時空を超える旅のなかで、“地獄”を知ってしまった迷子探偵。彼が選択した究極の決断とは?ディスコ・ウェンズデイと名探偵たちの戦いはクライマックスへ。

■感想
ついに長い物語に決着がつく。ここまで奇想天外はちゃめちゃなストーリーを続け、最後にどういったオチをもってくるのか、そればかりが気になった。下巻では今まで以上にすべてが加速している。まずディスコや彗星Cは、時間と空間を移動できるようになる。そして、時間の折り返し地点と言われるある日時に何かが起こる。ものすごいスピード感プラス、まったく現実的ではない荒唐無稽な話しをつらつらとされるため、頭の中を整理しながら読まなければならない。整理しきれるかどうか、それが本作を読む資格があるかどうかだ。

未来のディスコは3億人もの子どもをさらうらしい。すべてが桁違いで、いったいこれは何なのかという、頭の中がぐちゃぐちゃになる。過去の発言を引用し、さも最初から考えてました的な表現をしてはいるが、行き当たりばったりなイメージは拭い去れない。予想通りディスコが困難に陥ると、彗星Cが大活躍する。ストーリーやその他の仕組みのことはもはやよくわからないが、彗星Cの未来や過去に対する言葉だけは、やけに印象に残っている。ある未来では、自分の和菓子屋がなくなっている。それを受け入れる彗星Cの器の大きさに驚いた。

本作がどの程度世間に受け入れられたのかわからないが、世に出てくるのが早すぎるような気がした。このぶっ飛んだ設定と、後先考えない、なんでもありな暴走は、他の作品にはない。特徴的だが、一般人には受け入れられないだろう。話題にはなるだろが、悲しいかな、なかなか売れないだろう。マニアックなファンはつくかもしれないし、何年後かに脚光を浴びるかもしれない。ただ、現時点では直木賞だとか、メジャーな賞をとることはないだろう。まぁ、作者はこのスタンスを貫き通すのだろうが…。

やはりこの作者の作品は、一筋縄ではいかない。



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