ディスコ探偵水曜日 中 舞城王太郎


2012.1.25  人の意思が現実を変える 【ディスコ探偵水曜日 中】

                     
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■ヒトコト感想

上巻よりもさらに独特な流れがある。上巻は未来からやってきた17歳の梢やパンダラヴァーなど、不思議な魅力があった。本作は暗病院終了の事件をただいろいろな探偵が推理し、その結果とんでもないことになるというだけだ。それにしても、ある探偵が推理し、それが間違っていると怪死する。かと思えば、死んだはずの探偵が生き返っていたり、人の意思によって現実が変わるというなんでもありな理論をそのまま押し通している。はっきりいえば、ミステリーとして正しくはない。ぶっ飛びすぎて、これがミステリーだと言われて納得できる人はいないだろう。ミステリー風のとんでもない物語だ。にもかかわらず結末がどうなるのか気になるのは、なぜだろうか…。

■ストーリー

蝶空寺嬉遊、桜月淡雪、美神二瑠主、名探偵たちは華麗な推理を披露してゆく。果たして、ミステリー作家・暗病院終了の怪死とパインハウスが秘めた謎は解明できるのか。そして、二〇〇六年七月十五日二十三時二十六分にいったい何が起こるのか?真実は逃げ水の如く近づけば遠ざかる。「無駄ですよ。この事件絶対終わりませんよ」。行け、ディスコ、世界がお前を待っている。

■感想
暗病院終了の事件というのは、上巻の早い段階で解決したものと思っていた。そう思う原因は、次々登場する探偵たちが、さも正解のようにとんでもない推理を披露するからだ。推理が語られる間は、それが正解のように、すべてのつじつまが合う。ただ、探偵が怪死すると、突然、推理が間違っていたという別の探偵の推理が始まる。はっきり言えば、主人公であるディスコ水曜日以外の推理にはなんの意味もないことは早い段階でわかっていた。唯一キャラクターとして目立つ彗星Cだけは特別扱いされているので、今後なんらかの重要な言葉を発するのだろう。

意識が現実を変える。文章にされてツラツラと説明されてもよくわからない。作者は本格ミステリーにならい、よく作中に図を描くことがある。意識が現実を変える部分の説明図は非常によくわかり理解を助けるが、その他の推理に関する図。特にパインハウス関連は、もはやどうでもよくなってしまう。難解な神話をもじったような言葉を連ね、なんでもないただの床であっても、さも意味ありげなものにしてしまう。これほど無意味なこじ付けを続けるのも、もしかしたらそれ自体が何か最後に大きな仕掛けのための前フリなのだろうか。

後半ではとうとうディスコ水曜日が本格的に推理にのりだす。意味ありげな「SSネイルピーラー」や、文脈に無理矢理意味を見つけ出そうとするその他の探偵たち。彗星Cは相変わらず一人独特な力を示しつつ、すべてを凌駕する存在感がある。ディスコ水曜日が梢を探し出す物語なので、最終的にはそこが落としどころなのかもしれないが、この長い前フリが、意識が現実を変えるということを言いたいがためのことなのだろうか。行き当たりばったりに思えてしょうがないのだが、本当のところはわからない。

これらがすべて計算の上に成り立っているのなら、常人では理解できない境地だ。



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