ディスコ探偵水曜日 上 舞城王太郎


2011.12.15  ふざけた名前にしびれる 【ディスコ探偵水曜日 上】

                     
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■ヒトコト感想

ぶっ飛んだ設定と、よくわからないヘンテコな名前。いつもどおりの作者の雰囲気だが、冒頭から引き込まれてしまう。探偵ディスコと一緒に暮らす6歳の梢に、突然17歳の梢が入り込む。ありえない展開だが、魂を盗む「パンダラヴァー」の存在や、時系列をめちゃくちゃにするような複雑な展開など、ミステリー好きにはたまらないかもしれない。それが、彗星Cが登場してくるあたりから、はちゃめちゃっぷりに拍車がかかる。名探偵が大集合し、意味が複雑すぎてまともに思考できない事件が起こる。トリックの解明についても、まったく説得力がない。それらをわかっていながらも、半分ギャグとしてとらえながら楽しむことができるから不思議だ。

■ストーリー

迷子専門の米国人探偵ディスコ・ウェンズデイは、東京都調布市で、六歳の山岸梢と暮らしている。ある日彼の眼前で、梢の体に十七歳の少女が“侵入”。人類史上最大の事件の扉が開いた。魂泥棒、悪を体現する黒い鳥の男、円柱状の奇妙な館に集いし名探偵たちの連続死―。「お前が災厄の中心なんだよ」。ジャスト・ファクツ!真実だけを追い求め、三千世界を駆けめぐれ、ディスコ。

■感想
まず名前からふざけている。ディスコ・ウェンズデイに彗星Cに大爆笑カレーなんてのは、常識を覆す名前だ。しかし、それが許される土壌が作者の作品にはある。名前やキャラ設定については、もはやリアリティを求める必要はないだろう。そこに存在し、変な理論を押し付け、都合が悪くなると暴れまわる。そんなめちゃくちゃなストーリーだが、なぜか引き付けられてしまう。17歳の梢は本当に17歳の梢なのか。時間を超えた何かというのは、本当に存在するのか。その不思議さの答えを知りたいために、読み進めてしまう。

人の魂を奪う「パンダラヴァー」だとか、人の魂が入れ替わるだとか、突然事態が大きく変化していく。この突然の方向転換と、思いもよらないストーリー展開が作者の魅力だろう。名探偵が殺害され、その秘密と6歳の梢の捜索がいつの間にかリンクしており、気づけば彗星Cと共に、トリックを解明しようとする。なぜか彗星Cが複雑なトリックを説明したりするが、それはこじつけ意外の何者でもない。読んでいて意味がわからないが、それを含めて、この物語の面白さなのだろう。

既存のミステリーを揶揄するように、名探偵が登場し独自のとんでもない推理を展開する。ただ、それは当たり前のように誰かに覆される。もはや上巻というだけで、まだまだ続く本作の真の謎は解明されないのだということは想像できる。そして、声高に推理を叫ぶキャラは、すぐに死んでしまうだろうことも織り込み済みだ。なので、驚きはない。めちゃくちゃなネーミングセンスと、ぶっ飛んだ推理や事件に慣れてくると、次はどんなはちゃめちゃなことが起きるかということを期待してしまう。

真の大どんでん返しは、下巻まで読まないとわからないだろう。



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